厚生労働省は、働く男性が育児休業(育休)を取りやすい法律の整備を始める。育休の取得を促すため、個々の従業員への周知を企業に義務付けるとともに、育休中の給与を補う給付金の額を引き上げる方向で検討に入る。早ければ2021年の通常国会に育児・介護休業法(育介法)改正案を提出する。

男性の育休取得は伸び悩んでいる。18年10月現在で6%にとどまり、82%に上る女性とは対照的だ。政府は20年までに男性の取得率を13%としたい考えだが、現状では達成が難しいとみられる。取得期間にも男女差があり、9割の女性は6カ月以上だが、6割の男性は5日未満。こうした状況を改善しようと、自民党内では議員連盟が発足し、新たな仕組みを求める機運が高まっていた。

 これを受け、厚労省は3年に1度の育介法の見直しに合わせ、男性の育休取得の促進策を1年かけて議論する。政府・与党内では、妻の出産が近い男性に対して取得を促すよう企業に義務付けるほか、取得前の賃金を支給する育児休業給付金(最大67%)についても、出産直後1カ月など限定された期間に限り、80%程度に引き上げることなどが検討されている。

 自民党の議連では当初、個々の男性に育休取得を義務付けることを求める意見があったが、「女性に強制していないのに男性だけ義務化するのはおかしい」と慎重な声が多かったため、取得の義務化は見送る。

 厚労省は、財源となる雇用保険の収支管理についても見直す予定だ。雇用保険は労使の保険料と国庫補助で賄われている。もともとは失業時に一定期間の所得を補償する失業給付が中心だったが、現在は育休の給付額が上回っている。現状では一体的に管理しているが、20年4月以降は育休と失業の給付を切り離し、どちらかの財政が悪化しないように調整できるようにする。【阿部亮介】 

最終更新 1月6日 01時11分
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