日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告(65)ら保釈中の被告が逃走する事件が相次いでいることを受け、法務省が保釈中の被告にGPS(衛星利用測位システム)の発信機を装着させ、所在を把握する方法として、空港などに接近したことを知らせるアラートシステムの導入を検討していることが15日、関係者への取材で分かった。

森雅子法相は有識者で構成する私的懇談会「GPS付き保釈等勉強会」(仮称)を16日に設置、2月の法制審議会(法相の諮問機関)までに具体的な制度づくりに着手する。裁判所は近年、保釈を積極的に認める傾向を強めているが、一方で保釈中の逃走や再犯も目立っており、法務省はGPSを柱とする抜本的な制度改正で歯止めをかけたい考えだ。

関係者によると、保釈等勉強会は弁護士や元検事、元裁判官、大学教授らで構成。保釈中の被告について、海外逃亡の恐れが高い場合などは、GPSを使った行動監視を可能とする方向で検討する。監視主体を、保釈を許可する裁判所とするか、法執行機関である検察当局とするかなどについても議論する。

GPSで常時監視する場合は人権上の問題が懸念されるほか、各地に監視要員を確保しなければならない。そのため、裁判所が保釈条件で指定した住居から一定の距離を離れた場合や、空港など特定の場所に接近し、海外逃亡の恐れが生じた場合などにアラートを発する方式を導入する方向で検討を進めるという。

保釈条件で海外渡航禁止とされていたゴーン被告は昨年12月29日、音楽コンサート設備用の箱に身を隠して関西空港のエックス線検査をすり抜け、プライベートジェットで不法出国したとみられている。このアラートシステムが導入されれば、ゴーン被告のような逃亡も防げる可能性が高い。

同様のシステムは模範的な受刑者が更生を目指す「開放的処遇施設」などで平成18年から試行導入され、省令改正を経て民間が運営に加わるPFI刑務所を含む6施設で24年度までに導入されている。



相次ぐ保釈中の被告の逃走を受け、森雅子法相が16日、有識者で構成する「GPS(衛星利用測位システム)付き保釈等勉強会」(仮称)を設置、具体的な制度づくりに着手することが明らかになった。GPSは開放的処遇施設などで10年以上前から一部の受刑者を対象に導入されているが、保釈中の被告と受刑者では身分が大きく異なる。人権への配慮や監視態勢の確立が課題となりそうだ。 日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告(65)の弁護人は当初、「アンクレット」と呼ばれるGPS装置の付いた足輪の装着を提案し、保釈を申請していた。だが、日本では実績がなかったため、退けられていた。

一方、欧米ではGPSの装着を義務付けた保釈が認められている。カナダのバンクーバー国際空港で、米政府の要請を受け、身柄を拘束された中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長は、GPS装置の常時装着などを条件に保釈が認められた。

元裁判官で法政大法科大学院の水野智幸教授(刑事法)は「GPSの装着を条件に保釈を認めるのなら、日本でも歓迎する弁護人は多いはず。GPSによる監視は完全ではないが、逃げにくくするという威嚇効果がある」と指摘する。

法務省内で検討されているのは、空港など特定の場所に立ち入った場合に、警告を発するアラートシステムだという。元検事の高井康行弁護士は「GPS監視の最大の目的は国外逃亡を防ぐことにあり、最低限の機能は果たす」とみる。

裁判所は近年、保釈を積極的に認める傾向を強めている。全国の地裁、簡裁が保釈を許可する割合(保釈率)は平成15年の11・4%から30年には32・1%と3倍近くに増加。ゴーン被告のような不法出国を防ぐためGPSの早期導入に向けた議論が期待される。(大竹直樹)

1/16(木) 6:49
産経新聞
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