家なし老人を生んだ「だれも得しない法律」の闇
入居者の死後も契約は続いていく
2020/01/28 11:00
https://president.jp/articles/-/32451

高齢者の入居を拒む不動産業者は多い。それは孤独死されるのを避けたいからだ。司法書士の太田垣章子氏は、「いまの法律では孤独死の後も契約が続いてしまう。その場合、相続人を見つけて解約してもらわない限り、その部屋をほかの人に貸し出せない」という——。

■増加する「一人暮らし高齢者」の住む家はあるのか
本当に高齢者は、賃貸物件を借りられないのでしょうか。

 国立社会保障・人口問題研究所が発表した2018年人口推計によると、65歳以上の人口の割合は2015年が26.6%(約4人に1人の割合)であるのに対し、30年後の2045年には36.8%(約3人に1人)の割合になり、75歳以上の人口は同様に12.8%から21.4%に増加します。とりわけ単身高齢者世帯数は、2015年は601万世帯であるのに対し、20年後の2035年には762万世帯まで増加が見込まれています。当然、賃貸物件を借りたいと思う人も増えてくるはずです。

※中略

■事業者と家主で認識にズレがある
この調査からも、高齢者が賃貸業界から歓迎されていないことが浮き彫りになりました。急速に増加する高齢者。おのずと借りる層も高齢化になり、現在の入居者の年齢層も、高くなっていくことは間違いありません。それでも「できたら貸したくない」、そう思っている不動産会社・家主が大半です。

積極的に高齢者を受け入れていると回答した事業者は、たったの7.6%。そうではない理由は「大家の理解が得られないから(得られていないから)」が51.5%。その他「自社にとっての手間暇がかかるから」と「自社にとってリスクがあるから」を合わせると25.0%にもなります。

一方、家主の方は17.9%が、積極的に受け入れています。これは事業者より10%ほど高い数字です。その理由は滞納さえなければ退去が少なく、「長期安定経営になるから」が83.0%。続いて「社会貢献になるから」が58.0%、「空室だと困るから」が53.4%でした。

家主の方が賃貸経営が事業である以上、避けられない、もしくは高齢者世帯の諸事情により貸してもいいと思っているようです。

※中略

■孤独死で具体的にどんなトラブルが起こったのか
自主管理の家主以外、直接トラブルの対応をするのは管理を担当する会社。そのため実際に高齢者によって日々の迷惑を被るのは、事業者だからでしょう。家主は事故物件となり金銭的な被害を受けない限り、日々の対応は管理会社にしてもらえるので、空室よりはいいと考え高齢者に部屋を貸す。一方の事業者は、同じ管理手数料で手間暇かかる高齢者を避けたいので、消極的にならざるを得ないということでしょう。

また管理会社からすると、家主を説得して高齢者に貸して、何か大きなトラブルになったときに、自分たちの責任を問われるのが怖いので、窓口の段階で断るということもあるかもしれません。

事業者側が主張する大家の理解を得られない理由は、「孤独死の恐れがあるから」が89.3%といちばん多く、手間やリスクも「孤独死した場合の対応」が87.8%と最も高い数字となっています。人は必ずどこかで死ぬ生き物ですが、やはり貸す側にとって「孤独死」は最大のリスクとなっているようです。

●家族が相続放棄してしまったので、荷物の処分に手間暇がかかってしまった
●遺品整理に多額の費用と時間がかかってしまった(家主負担)
●死臭や痕跡が残り、次の借り手が見つからず建物取り壊しとなった
●生活保護受給者だったが、亡くなった日からの家賃補助は打ち切られ、室内の家財道具撤去費用も負担してもらえなかった
●遺品の引き取りにこない、連帯保証人(遺族)は無視
●病死であっても近隣から耳に入るので募集で告知すると入居申し込みがない
●病死判定だと賃料減額が発生しても保証人に責任を問えない(家主負担)

※以下省略