神奈川県の大量の行政データが蓄積されたハードディスクドライブ(HDD)が流出した事件で、職場に保管されたHDDを盗んだとして窃盗罪に問われた情報機器会社「ブロードリンク」(東京・中央)の元社員、高橋雄一被告(51)の初公判が10日、東京地裁(今井理裁判官)であった。高橋被告は「間違いございません」と述べ、起訴内容を認めた。

検察側は冒頭陳述で、データ消去を担当していた高橋被告が、職場の人けのない時間を見計らってHDDを持ち出していたと指摘した。

起訴状によると、高橋被告は2019年12月3日、東京都大田区のブロードリンクのデータ消去室に保管されていたHDD12個(時価計2万4千円相当)を盗んだとされる。捜査段階では容疑を認めた上で、HDDを盗んだのは「オークションで売却する目的だった」と供述していた。

高橋被告は16年にブロードリンクに入社。社内調査の結果、入社後に職場からHDDを持ち出すなどして、計約7900個をネットオークションに出品していたことが判明した。このうち約3900個は記憶媒体で、同社はこれらが会社から盗まれたものかどうか調査を進めている。

事件を巡っては、起訴された12個とは別のHDD18個がオークションで販売されていた。これらは神奈川県庁内の各部局の情報を蓄積する共有サーバーでバックアップ用に使われていたもので、個人名や住所が記載された納税記録や企業の提出書類が含まれていた。

県は富士通リース(東京・千代田)との間でHDDを含むサーバーのリース契約を結んでいた。19年春に契約が終了したため県はサーバーを返却。富士通リースはブロードリンクにデータを復元できなくなる作業を委託したが、データ消去を担当していた高橋被告がHDDを持ち出し、オークションに出していた。

県が使っていた18個は既に回収された。高橋被告はこの18個を含む24個のHDDを盗んだ容疑で1月に再逮捕されている。問題発覚後、ブロードリンクにデータ破棄を委託していた官公庁や大手企業が情報漏洩の有無の確認に追われるなど、影響が広がった。

2020/2/10 10:24更新
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55446140Q0A210C2CR0000/