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武漢封鎖1カ月、涙の女性住民「精神が崩壊した」
[2020年02月22日18時59分]

中国当局が新型コロナウイルスの発生地の湖北省武漢市を事実上封鎖して23日で1カ月。外部との交通遮断など封鎖は同省全域に広がり、習近平指導部は異例の強硬策で封じ込めを図る。一方、極度の緊張と不自由な生活を強いられている住民は不安や不満をため込む。入院中の患者や医療従事者もぎりぎりの闘いが続き、心のケアが深刻な課題になりそうだ。

「もう長い間外に出ていない。精神が崩壊した」。会員制交流サイト(SNS)に投稿された動画で、武漢市在住とみられる女性が自宅ベランダに座り込み、泣きながら訴えた。

人口約5900万人の湖北省では現在、空港や鉄道、高速道路が外部と遮断。住民は不要不急の外出を禁止され、食料品や日用品は各地区の代表が購入して分配する仕組みが導入された。感染の恐怖におびえ、一日中自宅にこもる生活が続く。

一部地区では食料品が不足気味で価格も高騰。武漢市に隣接する孝感市の農村の20代女性は通信アプリで取材に応じ「村は死者も出たのでパニックだ」と語り「キャベツ1玉で70元(約1100円)もした。十分な食料が手に入らず、一部住民は隠れて川で魚を捕っている」と明かした。

最前線の医療現場の精神的負担も大きい。中国メディアによると、20日までに全国から3万2千人超の医療従事者が武漢市へ派遣された。医師の死亡が相次ぎ、医療従事者約1700人の感染が判明している。

上海市は21日、武漢市へ約50人の精神科医を派遣。現地の病院で患者に加え、医療従事者の心理ケアに当たる。ある医師は中国メディアに対し「精神が張り詰めており、専門的なケアが必要だ」と強調した。

習国家主席は「湖北の勝利は全国の勝利」と訴え、力ずくで抑え込む構えだが終息は見通せない。感染確定の診断基準もころころ変わり、住民は当局への不信感を一層募らせている。武漢市の30代女性は「うその発表はいらない。早くこの状況が終わり、普通の生活をしたい」と嘆いた。(共同)