これまでとは次元の異なる事態──。2019年秋、菅義偉官房長官は「ヒアリの侵入」を巡り、そう言及した。同年10月の調査で、東京・青海ふ頭で約750匹の働きアリとともに、大量の卵を産む女王アリ56匹が見つかり、ヒアリが我々の生活圏まで侵入してくる可能性が高まったのだ。春を迎えてこれから気温が上昇し、ヒアリの活動が活発化する。水際対策の最前線に迫った。(ライター:中村計/撮影:菊地健志/Yahoo!ニュース 特集編集部)

まるで「アリホイホイ」
「ごきぶりホイホイ」ならぬ「アリホイホイ」のような趣だ。木の根元に置かれた小さな黄色い長方形のボックスには、前後左右に入り口があり、入ると粘着質の床に脚の自由を奪われる仕掛けになっている。下面にまかれている粉状の物体は、ポテトチップスを粉砕したものだ。油っこいものがアリの好物なのだ。

本家のゴキブリ用トラップと異なるのは、ボックスの大きさだけでなく、屋根の部分に「調査中」「手をふれないでください」と警句のような文言が印字されているところだ。

北九州市の環境局環境監視部の職員は、定期的に太刀浦コンテナターミナルおよび近隣地域にこの捕獲ボックスを設置し、周辺のアリの生息状況を調査している。2019年師走、その調査に同行させてもらった。
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ヒアリが発見された太刀浦コンテナターミナル(北九州市)から2キロ圏内の調査。ここでもしヒアリが見つかったらグラウンドは使用禁止になる可能性がある。環境保全担当課長の江藤優子さん(左)と同主任の金子容子さん

グラウンド脇に置かれていた一つのボックスを開けると、そこには2、3ミリの小さなアリが何匹も張り付いていた。日本国内には、じつに約300種ものアリが生息している。調査を統括する環境保全担当課長の江藤優子さんは話す。

「ここにもいろんな種類のアリがすんでいるので、肉眼では、なかなか特定はできないと思います。小さいですし。似ているアリも、たくさんいますからね」

2、3ミリのアリは大雑把な色を確認するのが精いっぱいで、素人ではヒアリの形状の特徴までは判別できない。この日の調査では、ヒアリは確認されなかった

環境局のターゲットは、ずばり、特定外来生物のヒアリだ。漢字を当てるなら火蟻。英名では、ファイア・アントと呼ぶ。スズメバチの近縁であるヒアリは、お尻に毒針を持っている。毒が非常に強く、刺されると火を当てられたような痛みを感じることから、このような名前がついた。

体験者の話を総合すると、アリにしては痛いものの、刺された痛み自体はさほど大きなものではないようだ。

ヒアリの大きさは2ミリから6ミリ程度。ばらつきがあるのが特徴だ。全体的に赤褐色で、お尻の部分が黒っぽい。ただし、ぱっと見、似たようなアリはいくらでもいる。職員もその場では判断しかねるので、いったん持ち帰り顕微鏡で確認し、ヒアリの可能性が高いと判断した場合は専門家に特定を依頼するのだという。

https://news.yahoo.co.jp/feature/1583

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