コロナで進む「習近平の孤立」
世界中で猛威を振るっている中国・武漢発の新型コロナウイルスは、中国国内の政局にも大きな影響を与えている。

中国共産党の官製メディアは「うまく対応できている」と発表しているが、社会が混乱し、経済低迷も深刻化しているのが実態だ。これまで権力集中を進めてきた、習近平国家主席とその周辺の危機管理能力の不足が露呈した形だ。

同時に、失敗の責任をすべて下に押し付けようとする習氏のやり方に対し、党内の不満が高まっている。習指導部と距離を置く李克強首相が率いる共産主義青年団系の幹部だけではなく、習氏の盟友だった王岐山国家副主席も、習氏との関係が悪化している。

消息不明だった王岐山の復活
中国の習近平国家主席は4月3日、共産党指導部メンバーらを引き連れて、北京郊外で行われた植樹のイベントに参加した。中国の国営中央テレビは同日午後7時のニュース番組で、トップニュースとしてその映像を流した。

注目されたのは、1ヵ月以上も消息不明だった国家副主席の王岐山氏が登場し、ほかの指導者と一緒にスコップで土を掘り、元気な姿を見せたことだ。

王氏は2月27日、訪中したセルビア副首相と会談して以降、公的な場に姿を見せなくなった。中国の主要指導者が参加する一連の重要会議を欠席しただけではなく、訪中した外国の指導者との会見や、国内のイベントにも出席しなくなった。「王氏は新型コロナウイルス肺炎にかかったのではないか」との噂も一時流れた。

その後、複数の共産党筋によれば、王氏は習氏との対立が深刻化したため、不満表明のために重要行事をボイコットしていたという。3月末に、習氏が大幅譲歩する形でようやく双方が手打ちし、王氏は党内抗争に勝利した。

「湖北省トップ更迭」の裏側
習氏と王氏の対立を裏付ける状況証拠はいくつもあった。

まずは王氏の側近で、湖北省の蒋超良・同省党委員会書記が2月中旬に更迭されたことだ。金融問題の専門家だった蒋氏は1990年代末のアジア金融危機の際、当時の広東省副省長の王氏の右腕として活躍したことをきっかけに政界入りし、国家開発銀行の頭取、吉林省長などを経て、2016年秋から湖北省のトップとなった

昨年12月から湖北省でコロナウイルスの感染が拡大したことについて、蒋氏はすぐに党中央に報告したが、「公表するな」と指示されたため、黙殺した。その後、情報隠蔽の張本人と批判された。

習近平指導部は2月13日に蒋氏の更迭を発表した。その後、蒋氏は北京に呼び戻されて実質的に軟禁され、厳しい処罰も検討されたという。

こうした現場の幹部に責任を押し付ける習氏のやり方に対し、蒋氏の後ろ盾である王氏は、大きな不満を持っていた。

共産党内部に詳しい北京の関係者によれば、蒋氏の扱いをめぐって王氏が習氏に何度も交渉を持ちかけたことが習氏の逆鱗に触れてしまい、二人の関係悪化は決定的になった。

反・習近平の「檄文」が流れた
共産党の長老、姚依林元政治局常務委員の娘婿である王氏は、習氏と同じく元高級幹部子弟で構成される「太子党」とよばれるグループに所属し、習氏との関係は極めて良好だった。

一期目の習政権(2012〜2017)では、王氏は党の規律部門を束ねて反腐敗キャンペーンを主導し、習氏の政敵を次々と失脚に追い込んだ。

2017年秋の党大会で、定年を超えた王氏は党の役職から退いたが、習氏に請われる形で外交と国際金融を担当する国家副主席に就任した。

しかし、その後に起きた米中貿易戦争で、強硬姿勢を貫く習氏に対し王氏が不満を持ち、習氏も担当外のことに口出しする王氏を敬遠するようになり、二人の距離は少しずつ開いていった。

今年の2月下旬、王氏と関係の深い民営企業の海南航空が突然、国の管理下に置かれ、国有化される方針が固まった。海南航空は昨年から経営危機に陥っており、経営陣は立て直しに力を入れていたところだった。そこへ政府からいきなり専門家チームが送り込まれ、経営陣を奪った形となった。今後、旧経営陣の責任が追及され、捜査の手が王氏に及ぶ可能性もある。習氏による王氏への嫌がらせの一環ともいわれている。

全文はソース元で
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71666
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