新型コロナウイルスが全国的に猛威を振るう中、岩手県が唯一、感染者ゼロを続けている。高齢化と過疎化で人的往来が少なく、感染リスクを高める「密閉・密集・密接」の環境が限られることが理由に挙げられるが、ウイルス検査数の極端な少なさも指摘される。医療関係者は「首都圏などからの『コロナ疎開』もあり、時間の問題だろう」と危機感を強める。

 厚生労働省によると、同県の検査実施人数は9日までに127人で全国最少。2番目に少ない島根県(191人)とも大差がある。

 岩手県の達増拓也知事は10日の会見で「やるべきことはやっている」と対応に問題はないとの認識を示し、検査に携わる医療関係者も「検査数を意図的に抑えてはおらず、疑わしい事例を優先していても出てこない。肺炎の高齢者も少なくないが、感染者との接点はない」と打ち明ける。

 県内の人口密度(83・8人)は、北海道に次いで2番目に低い。大都市圏と異なり、いわゆる「密閉・密集・密接」の条件にあてはまる場所が少ない。東日本大震災が起きた3月11日に合わせ、帰省した遺族らから感染が広がることも懸念されたが、杞(き)憂(ゆう)だった。

 県内関係者が最も警戒するのは、コロナ疎開の帰省者や観光客らがウイルスを持ち込むこと。東京都が外出自粛を要請した後の4月1日には、達増知事が東京、神奈川、埼玉に宿泊した後、観光や仕事で来県した人を対象に「県内で2週間は不要不急の外出を控えてほしい」と求めた。

 大学病院の医師は「(10日に初の感染者が出た)鳥取と環境は変わらず、この2週間が危ない。帰省者らが発症すれば、次の1週間にはその家族が発症する恐れがある。感染者集団が出た場合に今から備えることが重要だ」と話した。

4/11(土) 18:21配信
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