「俺たちの母と金を奪ったAを絶対に許さない。必ず見つけ出してやる」

 そう息巻いていた家族思いの青年が、この3月、徳永神風(かみかぜ)“容疑者”(22)として報じられることに――。

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 90年代に一世を風靡したバラエティ番組「進め!電波少年」(日テレ系)。その番組内企画で“電波子”として活躍した智子さん(仮名・43)が神風の母親だ。19歳で歯科医師の夫と結婚し、三男一女に恵まれた智子さんだが、2018年2月、当時21歳だった都内有名私大の学生・A君と駆け落ちしてしまう。

 智子さんの夫は糖尿病を患い、両目の視力を失っていた。一家の収入は生活保護と障害者手当。年子である4人の子供は奨学金で大学に通っていたが、智子さんは失踪当日、子供たちの通帳から計約180万円の奨学金を引き出していた。

 当時、夫は「週刊文春」にこう打ち明けている。

「失踪の翌日に、ゆうパックで通帳やカードが送られてきました。手紙などは一切なく、子供との写真も同封されていた。子供たちはひどく動揺しています」

母親がいなくなってタガが外れた神風
 神風は地元・浦安市の高校を卒業後、北海道の短大に通い、母の失踪時は國學院大に編入予定だった。

「文武両道を教訓とする父の勧めで、男兄弟は3人とも柔道部。みんな礼儀正しく、親の言いつけを守っていた」(一家の知人)

 母に代わり、同居する父と祖母の面倒を見ていたのが次男の神風だ。2年前、記者が自宅を訪ねた際にも「よろしくお願いします」と深々と頭を下げてお茶を出し、父親の口元を拭くなど介助するのを目撃した。

 子供たちは生活と奨学金返済のため、朝から晩までアルバイトする生活を送っていた。だが母の失踪から約半年経つと、神風の様子は一変してしまう。

「元々ヤンチャなタイプではあったけど、母親がいなくなってからタガが外れてきた。柔道部の後輩らにA君の自宅を見張らせ、『Aを見つけたらすぐ連絡しろ』とドスを利かせた声で凄んでいました」(神風の知人)

 さらに交友関係も変わっていったという。

飲み会で「簡単に稼げる方法がある」
「地元の悪い友達と飲み歩くようになり、女の子を集めて合コンを開いては、参加者から金を巻き上げていた。飲み会では『簡単に稼げる方法がある』と言い、聞くと『書類を取りに行く仕事』、『預金口座を作るだけ』とか怪しい話ばかり。『やり方は先輩に教わった』とも言っていた」(同前)

 昨年4月には父親が多臓器不全で他界。喪主を務める長男の横で神風は呆然とした様子だったが、その頃には詐欺グループの末端リーダーに昇格していたのだ。

 そして今年3月、詐欺容疑で警視庁に逮捕され、26日に送検された。

「神風は同世代の男を勧誘し、詐欺に騙された老人から現金を受け取る『受け子』を育成。スーツや携帯電話を与え、浦安市のビルに住まわせて各地に派遣していた。受け子たちは辞めたいと言っても、『辞めるなら代わりの受け子を紹介しろ』と脅されていたようです。現時点での被害者は9人で、被害総額は2200万円。神風は『詐欺には関わっていない』と容疑を否認しています」(捜査関係者)

 智子さんの現状について別の一家の知人が明かす。

「夫の死後、長女とは連絡を取っており、『夫の暴力が原因だった』『子供たちの事を心配している』などと話しているようです」

 拘置所の面会室で、母子の再会が果たせるか――。

4/12(日) 17:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200412-00037177-bunshun-soci