ほとんどの閣僚が「緊急事態宣言」に反対した理由

僕が安倍首相に会ったのは、4月10日。緊急事態宣言の3日後だ。

まず「緊急事態宣言がこんなに遅れたのは、なぜなのか」と問いただした。「財務省が強い反対をしたから、遅くなったのか」と。

安倍首相は「そうではない」と答えた。実際は「ほとんどの閣僚が緊急事態宣言に反対した」というのだ。なぜか。

実はほんの数カ月まで、日本の新聞やテレビはみな一様に「日本の財政状態は先進国で最悪だ」と政府を批判していた。国と地方自治体の長期債務残高は約1100兆円、GDP比200%という巨額の「借金」を抱えている。

先進国の中で最悪で、このままだと数年後には破綻するという厳しい指摘が絶えなかった。だから、閣僚たちも「こんな財政事情では、大きな財政出動は難しい。経済に悪影響を与える緊急事態宣言など、とんでもない」と考えたのだ。

僕も最初は、緊急事態宣言に反対だった。ところが、ヨーロッパ諸国やアメリカでコロナの感染が広がり、次々に緊急事態に突入していくのを見て、考えを改めた。世界は「戦時」に突入しているのだから、日本も戦時に即した対応が必要なのだ、と。

これまで僕は、もし第三次世界大戦が起こるとすれば、それは「核戦争」なのだろうと思っていた。ところが、新型コロナウイルスによって引き起こされている現在の状況こそが「第三次世界大戦」なのだと気づいた。

ならば、政府は緊急事態宣言をすべきである。僕が意見を伝えると、安倍首相は「我々もいまは戦時だと考えている」と答えた。

「罰則規定を設けるのは、憲法改正に匹敵する問題」

戦後日本は戦争から距離を置く姿勢を取ってきたので、これまでは「戦時」という発想がなかった。しかし、いまは人類が新型コロナウイルスと戦わないといけない。その意味では、まさに「戦時」だ。

安倍内閣もようやくそういう認識に至って、遅ればせながら、緊急事態宣言を出した。その結果、安倍内閣の支持率が上がるだろうと、僕は思った。しかし、世論調査を見ると、むしろ安倍内閣の支持率は落ちている。

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