【ベルリン共同】ドイツでは新型コロナウイルスの死者約8千人のうち、4割近くが高齢者や介護などの施設で亡くなった。同国西部の高齢者施設の女性施設長が26日までに「どうすれば被害を防げたのか、思い付かない」と感染防止の難しさを共同通信に語った。2週間で16人が死亡し、入居者の1割を失った。最善の対策を取ったが、ウイルスは忍び込んで来た。

 女性が勤務する西部ヘッセン州の施設では3月中旬に訪問者受け入れを禁じたが、約10日後に初の感染者が出た。その後はあっという間だった。女性は「高リスクの人を狭い空間でケアすることが根本的な問題だった。家族のように暮らしていたのに」と話した。

 日本の介護施設での死者は全体の約14%。ドイツは充実した医療システムを背景に死者を周辺国より抑えたものの、施設での集団感染は防げなかった。職員も全土で40人以上が犠牲となった。

 ドイツの高齢者施設では早い段階から入居者の隔離や入居者同士の距離を取るなど対策を進めた。南部にある別の施設職員は「外部との接触を絶つため、スタッフが職場に泊まり込んできた」と強調した。

 それでも北部ニーダーザクセン州パイネ郡の高齢者施設でも入居者90人のうち8人が死亡した。郡の職員ファビアン・ラース氏(36)は「3月からできる限りの対策を取ったが、感染を完全に阻止することはできなかった」と述べた。

 外部との交流を遮断し、持病のある入居者を自室に隔離。90人の職員を含む全員がウイルス検査を受けた。だが4月6日に初の死者を出し、2週間半で7人が亡くなった。施設全体で35人が感染、経路は不明だ。

 ドイツでは流行が下火になり、同州では5月20日から感染対策を取った上で家族の施設訪問が可能に。ラース氏は「入居者は長らく身内に会えなかった。訪問再開は意義あるものだ」と語った。

2020.5.26 20:38 共同通信
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