家事など1回10分未満の中強度以上の身体活動でも、積み重ねれば高齢者の要介護化リスクが低くなるとの調査結果を福岡工業大(福岡市)の楢崎兼司教授(運動疫学)らのチームが発表した。新型コロナウイルスによる「ステイホーム」で、筋力や運動機能が衰えている高齢者が運動を再開する際は転倒や骨折などのリスクが懸念されるが、楢崎教授は「家庭内の活動をより活発にすることでも一定の健康保持はできる」と呼びかけている。【吉川雄策】

 2019年に世界保健機関(WHO)が策定した認知症予防ガイドラインは、65歳以上の人に対し1日10分以上継続して有酸素運動をすることなどを推奨している。

 一方、楢崎教授らのグループが11年から篠栗町在住の65歳以上の高齢者1678人を対象に続けている調査では、比較的強度の高い「中高強度身体活動(MVPA)」と呼ばれる活動を、1回当たりはごく短時間でも積み重ねれば要介護化リスクが低くなることが判明。1日平均の活動合計が最も少ないグループ(男性10分未満、女性15.5分未満)と比べ、最も多いグループ(男性30.8分以上、女性42.6分以上)は、介護認定を受けるリスクが約55%低かった。グループは今年3月、調査結果を米国の科学雑誌に発表した。

 MVPAには、自転車の運転やジョギングといった運動だけに限らず、階段の上り下り▽料理の調理や皿洗い▽掃除機かけ▽洗濯物を干す▽部屋の片付け▽側溝の掃除――などの生活活動も含まれるといい、楢崎教授は「体が慣れない中で、急に運動を再開するのは危険な場合もある。階段の上り下りなど短い時間でも健康保持に効果があるので、無理せず取り組んでほしい」と話している。

毎日新聞 2020年6月5日 10時47分(最終更新 6月5日 11時18分)
https://mainichi.jp/20200605/k00/00m/040/070000c