6/7(日) 11:00配信
毎日新聞

競りにかけられるレンコダイ=佐賀市の佐賀魚市場で、石井尚撮影

 祝い事などで「尾頭付き」として重宝される白身魚のタイ。淡泊な味わいで、刺し身や焼き料理、煮付けにしてもおいしい。総務省の家計調査(2人以上の世帯)によるとタイの購入量は佐賀市が日本一だ。どうして佐賀でタイはよく買われているのか。理由を探った。【石井尚】

 ランキングは2017〜19年の平均で、1世帯当たりのタイの購入数量を示している。年間の購入量は佐賀市は全国平均(454グラム)を大きく上回る1491グラム。佐賀県水産課に尋ねると「あくまで推測」と前置きし「皆さん高級魚のマダイを想像するかもしれませんが、おそらくレンコダイの消費が多いのかもしれません。調査はあくまで『タイ類』でしているはずです」と教えてくれた。レンコダイとはキダイのこと。マダイのように大きくならず、体長約20〜30センチ程度だ。

 水産課の担当者は「市場に行けば理由がわかるかもしれません」とのこと。3月上旬の佐賀魚市場を訪れると、マダイにならんで発泡スチロールのケースにレンコダイが詰められ競りにかけられていた。大垣恭介市場長は「今日はしけの影響で通常の7、8割程度しか魚が入ってきていません」という。それでも長崎産や島根産のレンコダイは地元のスーパーマーケットの買い付け人らが競り落としていった。大垣市場長は「レンコダイは長崎で水揚げされる。昔から流通経路のある佐賀市に届きやすかったのではないか。九州では結構流通しているが、佐賀は特に多いかもしれない」と説明してくれた。

 レンコダイは佐賀市内のスーパーで2匹数百円程度で売られている。味もマダイに近くみずみずしく淡泊だという。「お祝い事に欠かせない。見栄えもよく尾頭付きとして好まれているのではないか」と付け加えた。

 一方、佐賀市では、釣りざおを手に持ちタイを抱えるエビス像が市内の街角に多くたたずむ。江戸時代から長崎街道沿いを中心に商人が商売繁盛を、漁師が豊漁を願い作られてきた。そんなエビス像で町おこしをしている「恵比須DEまちづくりネットワーク」の村井禮仁代表はタイの購入量が日本一であることに「そら、恵比須様が市内のどこにでもあるから、佐賀の人たちは昔から当たり前のようにタイを見てきた。なじみがあるんでしょうな。タイは結納に持って行ったりと、佐賀のお祝い事には欠かせない」と「えびす顔」で説明してくれた。

 尾頭付きを重宝し、格安で買えるレンコダイの存在が佐賀市のタイ購入量日本一を支えているようだ。

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