7/7(火) 9:30配信
毎日新聞

スルガ銀行の株主総会の会場前に並んだ株主=静岡県沼津市で6月26日、今沢真撮影

 シェアハウス向け不正融資発覚で揺れたスルガ銀行(本店・静岡県沼津市)が6月26日に定時株主総会を開いた。総会にはシェアハウス購入者でつくる「被害者同盟」のメンバーや被害弁護団が株主として多数出席。シェアハウス問題の「抜本的解決策」で3月に合意した後も、数十人にのぼるメンバーが不正融資の“残骸”に苦しめられていると訴えた。【毎日新聞経済プレミア・今沢真】

 ◇商品名は「フリースタイルローン」

 この日株主総会に出席した東京都内に住む40代の女性会社員も、苦しみ続けている一人だ。女性は2016年、都内のシェアハウス1棟を、スルガ銀行の融資を受けて約1億3000万円で購入した。知人から「シェアハウスへの投資がうまくいっている」との話を聞いたことがきっかけだった。

 初めての不動産投資。額も大きく迷いはあった。だが、家賃収入は保証されていると不動産業者から説明され、将来の安定した収入になると考え決断した。業者と一緒にスルガ銀行の横浜駅東口支店に出向き、融資の契約を行った。

 業者と行員から「1億3000万円を融資するにあたり、条件がある」と言われた。物件の融資とは別に、銀行から1000万円の無担保融資を受けることだった。これから物件を建て、完成して家賃が入るまでの間、このカネで毎月返済してもらうと説明された。金利は7.5%で、返済期限は15年だった。

 借金は1億4000万円に膨らむ。いま考えれば恐ろしい。だが、「あなたのために必要な融資だ」と業者から説明された。行員も「シェアハウス融資とこの1000万円はセットです」と言うので応じてしまった。これが今も女性を苦しめるスルガ銀行の無担保ローンだ。商品名を「フリースタイルローン」という。

 ◇全面解決のはずが……

 シェアハウス完成後、しばらくは約束の家賃収入が振り込まれた。だが、18年の年明けに暗転する。シェアハウス管理運営会社が経営破綻し、家賃収入がゼロに。巨額の借金だけが残った。「目の前が真っ暗に……」。当時を振り返る女性の口元はゆがむ。被害者の会に加わり、銀行との交渉を弁護団に委ねた。

 今年3月、シェアハウス問題の全面解決で、1億3000万円の借金は帳消しが決まった。苦悩から解放される“朗報”のはずだった。だが、女性は気が晴れなかった。その4カ月ほど前、弁護団との打ち合わせで、無担保ローンの1000万円は、協議中だが返済しなければならなくなる可能性もあると示唆されたからだ。

 女性は、スルガ銀行の口座に振り込まれたこの1000万円から高い金利を払い、不動産の登記費用を納めた。約230万円が口座から勝手に引き出されていたことが後でわかった。金額が空欄の出金伝票を行員から渡され、署名をさせられていた。230万円は業者に渡ったと思い説明を求めると「司法書士の費用や税金に使った」との話だった。だが、その後、自宅に税金の請求書が届いた。

 行員と業者がグルだったとわかったときには“後の祭り”だった。「その1000万円を今さら返せと言われても……」と女性は目を伏せる。

 ◇銀行側「真摯な対応を続ける」

 「抱き合わせ融資」は銀行法で禁止されている。金融庁はスルガの無担保ローンを「不正」と断定した。弁護団は、登記費用など不正行為と相当因果関係のある出費は、無担保ローンの残高から差し引くよう交渉を続けてきた。被害者の会約250人のうち200人近くは解決で合意したが、この女性を含め約40人が決着していない。

 弁護団の河合弘之弁護士は、株主総会で「銀行側は出費一つ一つの証明を求め、『ダメ』とか『いい』」とかいった細かな認定を続けている。シェアハウスの解決もこのままでは台なしになる。経営者には高度な判断をしてもらいたい」と訴えた。

 これに対し有国三知男社長(総会後、会長に就任)は「ご指摘いただいた点は十分に認識している。引き続き真摯(しんし)な対応を続けたい」と答えた。いつまでに、どのような形で解決するのか、説明はなかった。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/70f2f73bdfb6849b22590122c2a380d1d7c533a6