米山正寛 2020年9月10日 17時00分

 アフリカや中東、インドでサバクトビバッタが大発生するなど、世界各地でバッタによる農業被害が深刻化している。そんななか、日本でも大発生したことがあるトノサマバッタが群れるきっかけになる集合フェロモンを特定したと、中国科学院動物学研究所が科学誌ネイチャーに報告した(https://www.nature.com/articles/s41586-020-2610-4)。被害を抑える手法の開発につながる可能性がある。

バッタによる農業被害は蝗害(こうがい)と呼ばれ、古くから世界各地で恐れられてきた。群生の引き金となる集合フェロモンは特定できていなかったが、同研究所の康楽教授らは、単独で暮らすバッタを4〜5匹、同じ場所に集めると、4―ビニルアニソール(4VA)という物質を出すことを突き止めた。4VAは幼虫か成虫か、雌か雄かを問わず誘引物質として働いており、野外でも他のバッタを引き寄せたという。
 4VAは、バッタの触角にある感覚細胞で、OR35という嗅覚(きゅうかく)受容体と結合しており、この受容体を働かなくしたバッタは、4VAに誘引されにくくなることも確かめた。4VAやこれに似た物質を使ってバッタを集めて駆除するなど、新たな被害対策の構築に役立つかもしれない。

https://www.asahi.com/articles/ASN997QGTN8QULBJ00Q.html