商船三井は11日、モーリシャス沖でのケープサイズバルカー座礁・燃料油流出事故を受け、同船の用船者として現地の自然環境回復・地域貢献に複数年で総額10億円程度を拠出する計画を明らかにした。独自の基金設立や人的貢献、クルーズ船寄港などを計画。今回の事故の法的責任当事者は船主の長鋪(ながしき)汽船(本社・岡山県)だが、同日会見した池田潤一郎社長は「モーリシャスの環境、人々の生活に大きな影響を与える事故であり、用船者であるわれわれが社会的責任を負うのは当然のことだ」と資金拠出に踏み込んだ理由を語った。(2面に会見要旨)

 池田社長は会見の冒頭、座礁・油濁により「モーリシャスの人々、関係する人々に大変なご迷惑とご心配を掛けていることをおわびする」と陳謝した。

 今回の事故は商船三井が長鋪汽船から定期用船していたケープサイズバルカー「WAKASHIO(わかしお)」が7月25日にモーリシャス沖で座礁し、8月6日に燃料油流出による油濁が発生した。

 今回の事故では、船主の長鋪汽船が一義的に損害賠償などの法的責任を負う。しかし商船三井は今回、モーリシャスの自然環境への油濁被害を深刻に受け止め、損害賠償の枠外での資金拠出を決定。池田社長は「このような大きな社会的責任を負うべきケースは当社の歴史でもない」と述べた。

 池田社長は船主から用船し、貨物を運ぶビジネスモデルについて「当社だけでなく、世界の海運業がこのモデルでサービスを提供している。いわば海運の根幹であり、この安全の品質を高め、顧客から信頼されるサービスを継続するのは、海運継続のために必須だ」と説明。

 従来から検船など用船の安全品質管理に力を入れてきたことに言及した上で「残念ながらこのような事故が起こり、従来のやり方では足りなかったものもあるのではないかと考え、社内で深く議論を進めている最中だ。第三者の意見も伺い、船主との絆を深めて品質を高めたい」と述べ、用船のさらなる安全管理強化を図る考えを示した。

 商船三井は、今回のモーリシャス支援プロジェクトを 1.自然環境保護・回復 2.現地NGOと政府・国際機関の基金への拠出 3.人的貢献 4.地域社会・産業への貢献-の4本柱で進める。

 自然環境保護・回復では「モーリシャス自然環境回復基金」(仮称)を設立。現地のサンゴ礁回復、マングローブ・海鳥の保護を目的に、商船三井は発起人として数年間にわたり8億円程度を拠出する。船主の長鋪汽船も拠出の意向を表明しており、日本総合研究所が運営を支援する。

 現地の複数のNGOへの寄付やモーリシャス政府・国際公的機関の基金には計1億円程度を拠出予定。

 人的貢献では商船三井グループ社員の現地派遣を継続。10月にはモーリシャス駐在員事務所を設立し、地域社会との中長期的な連携を図るほか、毎年、世界各地のグループ社員数人を選抜し、モーリシャスでの研修を実施する。

 地域社会・産業への貢献では、2022年をめどに商船三井客船のクルーズ船「にっぽん丸」による日本発着のモーリシャス寄港クルーズを実施する。

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