【この記事には、性暴力に関する言及・表現があります。フラッシュバックなどの心配がある方は、ご自身の状態に注意してお読みください。】


 電車の中で、路上で、お店の中で、同意なく身体を触られる/触らされる、精液をかけられる、性器を見せられる。 多くの方 がこうした被害を経験している。

 しかし、2010年に警察庁が実施したデータによると、過去1年間に痴漢被害にあった人の89.1%が警察に通報・相談をしていないという(牧野雅子『痴漢とはなにか 被害と冤罪をめぐる社会学』2019年、エトセトラブックス、19頁)。

 実際この文章を書いている私も、これまで何度も痴漢被害にあってきたが、一度も通報したことはない。そして、被害を受ける最中に声をあげることもできなかった。私の周りの友人からも、被害を告発できた話はほとんど聞いたことがない。

 もしひったくりにあったら。もし道端で突然誰かに殴られたら。私はきっと迷いなく警察に通報しただろう。それが明らかな暴力行為で、犯罪だと心の底から迷いなく受け止めるから。フェミニズムについて多少なりとも知ることになった今の私ならば、痴漢は立派な性暴力だと受け止めることができる。しかし、友達と初めて浴衣を着て花火大会に行った中学生の私はそのことを知らなかった。電車通学を始めた高校生の私も、知らなかった。

 知らないまま痴漢をされ、周りの友人も同じように痴漢されている状況の中で大人たちは「ひどいね、気持ち悪いね、気をつけてね」と言ってくれたが、「それが犯罪だ」とは誰も言ってくれなかった。痴漢は"当たり前 "のモノで、“仕方のないこと”だと受け止めざるを得なく、友人たちとは慰め合いながら「痴漢にあわないための工夫」を共有するしかなかった。

【漫画で見る】痴漢が犯罪だとは誰も言ってくれなかった
 痴漢をされたときのあの恐怖、自分の人としての尊厳が否定されモノとして扱われたことへの傷つきは、被害から時間が経ってもそう簡単に過ぎ去るものではない。繰り返し思い返しては、落ち込む。そしてあのとき被害にあってしまった自分を責める。

 もし、もっと強そうな見た目をしていたら。もし、もっと周りに警戒していたら。もし、すぐに声をあげられたら。

 さらに当時の雰囲気を思い返して辛い気持ちになるのは、被害にあった私たち自身が「痴漢にあう=女性としての魅力がある」と思っていた節があったこと。性被害を相談すると「相手にされてよかったね」というような“モテ自慢”と揶揄されてしまうことと繋がっている。このような二次加害のマインドを私たち自身がどこか内面化してしまっていたのだ。

性暴力は、加害者がいるから起こるのだ
 今ならわかる。痴漢は性暴力で、性暴力は加害者がいるから起こるのだと。私がどんな見た目や態度であろうと、私に落ち度はない、と。だからこそ、もしそのことを痴漢被害にあう前に誰かが教えてくれていたら、と思うのだ。

 しかし世間を見渡してみれば、いまだ大人たちも痴漢が犯罪だという認識を十分に持つことができずにいる。過去の“軽い”性犯罪の告発が、堂々とバラエティに流れる。自衛ばかりを推奨する痴漢ポスターもなくならない。被害の告発を行えば、冤罪の心配ばかりが取りざたされる。

 そんな社会で、若い子どもたちが(もちろん世代問わず被害者にはなりうるのだが)どうやって安心して毎日電車に乗ることができるというのだろう。被害にあったとき、自分を責めずに適切な対応ができるというのだろう。

 これからを生きる若い子どもたちにどんな社会を手渡したいかと考えるとき、それは自分が経験してきたのとは違った社会だ。誰の被害も軽視されず、自己責任で片付けられず、犯罪が犯罪として認識される社会。そして誰もが被害者にもならず、加害者にもならない社会を手渡したいと思う。

 そのために、今の大人たち自身がどう変わることができるのだろう。いまだになくならない、痴漢をはじめとした性暴力の軽視は、この時代までで終わりにしたいと強く思う。

https://news.yahoo.co.jp/articles/143e657fd502bdfbc492453f1b78d5e3943a5740
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★1 2020/09/14(月) 11:09:18.33
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