統一まで3秒



 昨年9月に外務大臣に就任し、ほぼ1年が経ちました。この間、厳しい状況にあったのが日韓関係です。

 まず申し上げたいのは、旧朝鮮半島出身労働者問題に関する韓国大法院の判決は、明確な国際法違反だということ。新日鉄住金(現・日本製鉄)に賠償を命じた判決について8月4日、資産差し押さえ命令の「公示送達」の効力が発生しました。すぐに資産が現金化されるわけではありませんが、仮に現金化となれば、深刻な事態を招くことは間違いない。

 我が国としては、韓国に対し、国際法違反の状態を一刻も早く是正するよう強く求めていくと同時に、関係企業とは緊密な連携を取っていく。もちろん、万が一の場合をはじめ、様々なシナリオを想定しています。「対抗措置としてこういう選択肢を考えています」と表に出したら、外交になりませんからこの場では申し上げませんが、あらゆる選択肢を視野に入れて毅然と対応していきたい。

 もう一つ、日韓関係を難しいものにしているのが、輸出管理の問題です。我が国は昨年7月、半導体材料などの韓国への輸出管理を厳格化しましたが、この件についても、康京和外交部長官とは、輸出管理当局間で解決に向けて対話を重ねることが大事だと話をしてきました。ところが、当局間の対話が続いているにもかかわらず、韓国側の要請で7月下旬、WTOに紛争処理小委員会が設置されたことは極めて遺憾です。我が国としてはWTO協定の手続きに従って、淡々と対応していきます。

『愛の不時着』と『梨泰院クラス』
 また、輸出管理とは別の問題ですが、11月上旬にかけてWTOでは事務局長選が行われます。冷静に見ても、今のWTOは上級委員会に欠員が出るなど機能不全に陥っています。次の事務局長に求められる資質は大きく3つ。まず、主要国間の利害を調整する能力があるか。多角的貿易体制の維持・強化に積極的に貢献できるか。組織の透明性をきちんと確保できる人物かどうか。これらの条件を満たすような事務局長を選んでいきたいと考えています。

 事務局長選には各国から8人の候補者が立候補していますが、本来なら我が国も、こうした国際機関にもっと人材を送り込んでいくべきです。ある日急に「この人は事務局長にどうか、次長にどうか」ではなく、通商や知的財産などそれぞれの分野で、いかに有能な人材をプールしておけるか。そのプールも若手、中堅、すぐにでも事務局長になれる人……という具合に、ピラミッド型が理想です。これまでの日本は国際機関で活躍できる人材の育成やロビー活動が弱かった。国益を損なわないためにも、中長期戦略の中で、国際機関で要職を担うような人材を育成していくことが極めて大事だと考えます。

 ここまで韓国の国際法違反などを指摘しましたが、それとは別に私自身のことで言えば、緊急事態宣言中には、ネットフリックスで最近話題の『愛の不時着』も『梨泰院クラス』も全話観たんですよ。

 そもそも私はドラマ鑑賞が趣味なんですが(笑)、ストーリーやキャラクター設定が魅力的なのはもちろん、異文化を知るという意味でも海外の作品はいいなと思います。愛の不時着からは、南北の問題や、財閥の力が強い韓国企業の問題が見えてくる。梨泰院クラスも大手食品会社の会長に、小さな居酒屋を開店させた青年が立ち向かうという話で、家族経営が強い韓国ならではの物語です。



 茂木氏が続けて語った『半沢直樹』の魅力とは。さらに、中国の領海侵入や日露・日朝関係、次期総裁を巡る議論、アフターコロナ時代の外交方針などを語り尽くした「 中国の領海侵入、韓国の国際法違反にこう対峙する 」の全文は「文藝春秋digital」でお読みください。

全文はソース元で
https://news.yahoo.co.jp/articles/44f16200dad7c7c77a748758afed8594bf9f5504?page=2
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