菅新政権が16日発足した。安倍前政権の継承と「国民のために働く内閣」を掲げ、
新型コロナウイルス感染の収束と経済再生に全力を挙げるとしている。

ただ最大の焦点が、菅義偉首相がいつ衆院解散・総選挙に踏み切るのかにあるのは、論をまたない。

「せっかく総理大臣に就任したのだから、仕事をしたい」。首相は早期解散には慎重姿勢だ。
だが政権内の力学が派閥主導の「党高政低」の構図に変わる中で、新政権発足を「好機」と捉える党側からは解散圧力が強まりそうだ。

「コロナ感染が専門家の見方で完全に下火にならなければ、なかなか難しい。せっかく総理大臣に就任したのだから、仕事をしたい。
収束したらすぐにすることでもない」。菅氏は14日、自民党総裁選出後の記者会見で、早期の衆院解散に慎重姿勢を示した。

額面通りに受け取るなら、コロナ対策と経済再生で結果を出し、来年の通常国会も耐えしのいで、
東京五輪・パラリンピック後に満を持して解散する日程が浮かぶ。

しかし、永田町では解散が1年後だと受け止める向きは、与野党ともに少ない。早期に解散すれば与党は勝てるとの見方が強いからだ。理由の一つは世論調査の結果だ。

安倍晋三前首相が8月28日に辞意表明した直後に報道各社が行った世論調査の多くでは、
内閣支持率が20ポイントも急上昇して50%台を回復。安倍政権7年8カ月全体への好評価を印象づけた。

自民党の支持率も40〜50%と、野党を大きく引き離した。さらに新政権発足直後の共同通信の世論調査では、菅内閣の支持率は66・4%にも達した。

理由の二つ目は、野党が準備不足で、またもや多党乱立となる気配が濃厚となっていることだ。
立憲民主党は今月15日、国民民主党と無所属勢力を糾合した「新立憲民主党」に衣替えしたが、
候補者調整や空白区擁立を含め、詰めの作業はこれから。日本維新の会とれいわ新選組は独自に候補擁立を進めており、候補一本化へのハードルは高い。

衆院465議席のうち自民党は284議席(衆院議長含む)を占める。
党関係者によると、8月上旬の情勢分析では、野党が全小選挙区で統一候補を立てた場合、「最大で64議席減」との結果だった。
だが、ここにきて「現有議席を超える可能性がある」との分析も出ているという。

自民党有利の材料がそろい、党内には解散を求める声がじわりと強まりつつある。

菅政権の中枢幹部で、早期解散に最も積極的だとされるのは麻生太郎副総理兼財務相。
二階俊博幹事長も16日のNHKのインタビューで「いつ解散があっても対応できるよう準備を整える。明日でも結構だ」と述べ、強気の姿勢をアピールしてみせた。

想定される衆院解散・総選挙の時期はいつになるのか。
当初取り沙汰されていた10月25日や11月1日が投開票日となる日程は、いずれも政権発足まもない9月中の解散となるため、可能性はほぼ消えたようだ。

そこで、一部で取り沙汰されているのが、@11月3日公示―15日投開票A同10日公示―22日投開票―の線だ。
コロナ感染の「第2波」は全国で収束方向に向かっており、首相肝いりの「Go To キャンペーン」などで経済のてこ入れも進みつつある。
「第3波」が来ないとも限らない冬になる前に解散に踏み切るという日程だ。

臨時国会の会期を3週間とすれば、10月上旬の開会で月末までの解散となる。法案の処理が残れば、総選挙後の特別国会で処理するという手もある。
ただ11月22日は大安とはいえ、G20首脳会議がサウジアラビアである。首相にとって実質的な外交デビューであり、
自身初の日米首脳会談開催も想定されるだけに、外せない日程だろう。15日は外遊への影響は少ないが、日柄は仏滅だ。

そうしたことから、さらに一部でささやかれているのは、10月20日ごろに臨時国会を召集し、11月上旬に解散、
24日公示―12月6日投開票とする日程だ。6日は先勝で悪くない。なんといっても菅首相の72歳の誕生日でもある。
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