「働きやすい環境づくり──。そんな言葉ばかりが踊って…」。生鮮野菜を長距離輸送するトラック事業者は、ト協の広報誌に目を遣りながら、憤りの言葉を口にした。

「全国にあるトラックステーション(TS)を使ってください」という広報誌に書かれた文字。しかし実態は、「どこへ行ってもTSは、閉鎖と縮小」で、事業者にとって使えるものではなくなっているというのだ。

TSは5年前から見ると10か所以上が閉鎖し、現在は26か所へと減少。仮眠所などの設備も縮小されている。

トラック乗務員の働き方改革にライトが当たったこの数年間、あたかも逆行するかのようなTS。全ト協によると、TSは今後さらに閉鎖が予定されている。



「九州では揚げられない! 関東に向かって!」。

輸入野菜の市場価格に敏感な荷主からのオーダーを受け、1000km以上離れた東京へと急遽トラックが向かう。

長雨や猛暑で野菜価格が動いた今夏、そうしたオーダーが多かった。



仕向け地の急な変更でも、運行管理は欠かせない。事業者は運行管理のキモ、どこで休憩・休息を入れるのかに長年気を配り続けてきた。

「東神TS(神奈川県大和市)が宿泊できない?」。最近、事務所内でそんなやり取りがあった。従来、宿泊施設があったTSの施設が縮小しているというのだ。

全ト協によると、東神TSは2年前の6月、以前の建物を壊して建て替える「リニューアルオープン」をしている。HP記載によると、リニューアル後、宿泊施設はなく、休憩室とコインシャワーなどでの営業体制へと変更している。

働きやすい職場作りを通じてトラック乗務員を確保しようと腐心してきた事業者。遠方へと仕事に向かった乗務員に快適でゆっくりと休息できる場所を提供することは、「運行管理」という卑近なものではなく、まさに経営上の至上命題の位置づけ。「暑い夏に、積み込み作業後の汗をしっかりと落とし、安眠できる場所。トラックドライバーが職場に持つ前近代的なイメージを払拭するため、絶対に必要なものだ」

全ト協によると、東神TSは首都圏という土地柄、全国でも1、2の利用がある施設。しかし、「トラックは満車だが、宿泊はトラックの中。宿泊施設に加え、食堂も利用が落ちていた」と、建て替え前の状況を説明する。

東神以外はどのような状況か。

TSは、2003年に全国40か所目として完成した「奈良・針TS」(奈良県)を最後に、新たなものは建設されていない。HPによるとここ5年間は、「大曲TS」(秋田県)を皮切りに、今年7月末で閉鎖した「宮崎TS」(宮崎県)まで、13か所(保養施設1か所を含む)が閉鎖している。また、東神のように施設規模を縮小しているTSも数多く、9月5日からは都市圏にある「名古屋TS」が「土曜短縮・日曜休業」に踏み切った。

以下ソースにて
2020/10/20
https://weekly-net.co.jp/news/107171/