大阪市を廃止して特別区に再編する賛否を問い、1日に否決された「大阪都構想」の住民投票で、大阪市内24区のうち、南部を中心に14区で反対票が上回り、賛成票が多かったのは10区にとどまった。14区の内訳は、前回2015年の住民投票で反対多数だった13区と前回わずかに賛成が上回った東成区。前回とほぼ同様に地域的な傾向が明確に表れた。全体では賛成67万5829票、反対69万2996票の1万7167票差で、得票率は1・26ポイントの僅差だった。

 反対が多かった区で差が最大だったのは、投票者数が9万6757人と最多だった平野区。反対が賛成を8377票上回り、全体の票差の約半分を占めた。8万923人が投票した住吉区でも8045票差がつき、昔ながらの住宅街や高齢者が比較的多い南部の大票田で支持が広がらなかったことは大阪維新の会など賛成派にとっては痛手だった。

 北部では、マンション建設などで前回よりも人口が増加し、投票者数が約7000人増えた北区の賛成は前回より約2000票の上積みにとどまった。

 都構想が実現すれば市が再編される計画だった四つの特別区ごとに集計すると、淀川区(此花、港、西淀川、淀川、東淀川)、中央区(中央、西、大正、浪速、住之江、住吉、西成)、天王寺区(天王寺、生野、阿倍野、東住吉、平野)で反対多数。現役世代の比率が高い行政区を多く含む北区(北、都島、福島、東成、旭、城東、鶴見)のみが賛成多数だった。中でも新天王寺区は反対が約2万2000票上回り、5行政区全てで反対多数と傾向が顕著だった。前回から、各特別区に中核になるターミナル駅や中心街を配置させる区割りに変え、財政的な基盤の平準化を試みたが、結果的に賛否の傾向は変わらなかった。

 淀川区に再編予定だった港区は、「淀川が流れていないのに淀川区か」などと区割りを疑問視する声もあった。今回も前回も反対が上回ったが、差は約2000票から3倍の約6000票に広がった。10月15日に港区内で行った「まちかど説明会」で維新代表代行の吉村洋文知事は「淀川区発展」の可能性を力説した。25年1月の「都構想実現」で同年4月に開幕を迎えることを見込んだ大阪・関西万博やカジノを含む統合型リゾート(IR)の予定地になる人工島を引き合いに、「夢洲はものすごく成長する。IRで民間が1兆円の投資をする。万博の跡地でレガシーが残って活性化し、新大阪駅にはリニアと北陸新幹線が入る」と成長を訴えた。

 だが、ターミナルから離れた港区民には響かなかった可能性がある。また、多くの職員が庁舎となる現淀川区役所から淀川を挟んで3キロ以上離れた市役所本庁舎で勤務する計画だったことなどから、新淀川区は防災の面でも、専門家から「災害リスクが考慮されていない」という指摘もあった。

「ツートップ」の高い支持率維持できず
 さらに、毎日新聞の1日の出口調査と9月上旬の世論調査からは、告示前に比べて維新をけん引してきた代表の松井一郎市長と吉村氏の支持率が低下していることがうかがえた。府内の新型コロナウイルスの感染者は投開票日まで6日連続で100人を超え、対策への専念を求める声も少なくなかった。9月上旬の世論調査では、松井氏支持が57・9%、吉村氏支持が75・5%あったが、出口調査ではそれぞれ55・4%、68・9%だった。全体的には、1日の会見で両氏が「力不足」と認めたように、この「ツートップ」の高い支持率が維持できなかったことも反対多数の理由の一つと言えそうだ。【堀江拓哉】

https://mainichi.jp/articles/20201102/k00/00m/040/046000c
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