政府の「脱ガソリン車」政策に対応するため、国内で電気自動車(EV)の普及が課題とされる一方、自動車業界では急速なEV化への懸念も根強い。
ガソリン車とは使用部品が大きく異なり、完成車メーカーを頂点に部品会社が連なる現在の産業構造が激変する可能性が高いためだ。

 ガソリン車に約3万点の部品が使用されるのに対し、EVではその半分以下とされる。特にエンジンは不要となり、関連部品を手掛ける企業にとっては死活問題。
「今の形の自動車にこだわることはない」(関東地方の部品メーカー)とEV用の部品製造への転換を視野に入れる企業もある。

 日本自動車工業会によると、国内の自動車製造従事者約91万人のうち7割超の約69万人が部品産業で働く。
急激なEVシフトは雇用の喪失にもつながり、自工会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は「サプライチェーン(部品供給網)全体で取り組まなければ、国際競争力を失う恐れがある」と危機感をあらわにする。

 一方、ハイブリッド車(HV)はエンジンを搭載するため従来のガソリン車向けの部品も必要だ。
各社がHVに注力しているうちは、大きな産業構造の変化は避けられる。

 ただ、欧州などではHVも今後規制の対象になる公算が大きい。
EVへの転換が遅れれば「将来日本車が世界で取り残されるリスクがある」(自動車大手幹部)。
脱炭素に向けた車の電動化は、自動車大国・日本に難しい課題を突き付けている。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021011600411&;g=eco