栃木県足利市の山火事は、発生6日目となった26日も延焼を続けた。火災発生直後から4回にわたり、白煙が立ちこめる山中に入った消防団員が取材に応じ、「1カ所消してもまた別の所から火が出て、本当に切りがない」と難航する消火活動の様子を語った。

きつい勾配に「足がパンパン」
 「大量に散らばっている落ち葉がよく燃えるので、飛び火がそこらじゅうで起きてしまう」。現場で放水作業に当たっている足利市消防団第2分団長の本間貢さん(53)は、山林火災を抑え込む難しさをこう語る。

 本間さんの1回目の出動は、発生間もない21日午後3時半過ぎ。「林野火災発生」との一報を受け、約30人の団員らと両崖(りょうがい)山の東側斜面に出動した。だが火は見えず、最初に火災が確認された西宮町へと移った。すぐに放水に取りかかり、日付が変わる22日午前0時までホースを握り続けた。

 23日には午前4時半から再び山に入り、5時間半にわたり活動した。この日は強風の影響で、陸上自衛隊のヘリコプターによる放水活動が一時中断に追い込まれた。一度引き揚げた本間さんたちは、夕方から再び現場に戻り、地上から民家近くまで迫った火の手を食い止めた。周辺の安全を確認できたのは24日午前0時ごろだったという。

 長時間に及ぶ山中での消火活動に団員たちの疲労も蓄積している。陸自ヘリによる上空からの散水では一度に5トンの水が放たれるため、巻き込まれれば、けがをするおそれもある。近くで放水がある度に、一旦持ち場から離れなければならず、本間さんは「斜面の勾配がきつく、足がパンパンになってますよ」と打ち明ける。

 任務を終えた後の団員たちの顔は毎回、すすや泥で真っ黒になる。それでも本間さんは「県内外からたくさん応援に来てもらっているし、地形に慣れている地元の我々が頑張らないと」と次の出番に備えている。

住民「喉が痛い」
 26日に新たに避難勧告が発令された両崖山東側の足利市本城地区。この日昼には、谷状の斜面に広がる住宅地の上に、付近の山林から流れてきた白煙がもやのようにかかっていた。

 断続的に響くヘリコプターの爆音に時折、消防車のサイレンの音がまじる。絶えず白煙を上げ続ける山を心配そうに見つめていた同所、無職、福島尚さん(69)の自宅も避難勧告の対象になった。

 24日夜には家のすぐ近くまで火の手が迫ったというが、消防隊員が消し止めた。福島さんは「消防の人たちが頑張ってくれているので延焼の心配はあまりしていないが、今朝から煙りの臭いがすごく、喉が痛いです」と不安そうだった。
https://mainichi.jp/articles/20210226/k00/00m/040/284000c