※中國新聞

 空襲や原爆の犠牲者を悼む慰霊碑がある広島県福山市霞町の中央公園。「スケートボードのせいで(慰霊碑の)台座が黒ずんでいる」との声が編集局に届いた。現地へ向かうと、確かに高さ20センチほどの台座が黒く汚れている。スケボーで遊ぶ少年が現れるのは夜のようだ。夜の公園で何が起きているのか確かめた。

▽スケボーを台座にひっかけて技の練習

 日が暮れた午後7時ごろ、スケボーを滑らせながら若者が10人ほど集まってきた。慰霊碑の周囲で跳びはねたり回転したり…。慰霊碑の台座や、広島市から寄贈された被爆石にためらいなく座る姿もある。声を掛けると、全員10〜20代。高校生が多く、大学生や社会人も交じっていた。少年たちは「スケボーを台座にひっかけて、技の練習をすることがある」と言う。ある男子高校生は「この汚れはスケボーでついたとしか考えられないです」と申し訳なさそうに話した。

 福山市内には、市が整備したスケートボードパーク(千代田町)がある。ところが、遠方からわざわざ電車に乗って慰霊碑周辺まで来ている少年もいた。なぜなのか。「パークには照明がないから」という答えが返ってきた。中央公園には街灯があり、石畳で滑りやすいため「スケボーに適している」と少年たちは口をそろえた。

 公園管理者の市はマナー違反者に聞き取りするなどし、初心者向けの新たなパークの整備を検討している。ただ、中央公園以外にもJR福山駅南側の地下通路では、大音量の音楽を流しながらスケボーに興じる若者の姿もある。問題は環境整備ではなく、愛好者の良心ではないだろうか。

 市原爆被害者友の会の藤井悟会長(74)は「どんな場所か理解していないのか。怒りを通り越して情けなくなる」。過去にもスケボーが原因とみられる黒ずみを見つけたことがあるが、専用パークが完成して安心したところだった。「私たちの平和活動が足りなかったのだろうか。言葉がない」と声を詰まらせた。

▽器物損壊や礼拝所不敬の罪に抵触の可能性

 福山東署管内では昨年、スケボーに絡む通報が824件あった。同署によると、慰霊碑を傷つけたり不敬な行為をしたりすれば器物損壊や礼拝所不敬の罪、中央公園でスケボーをする行為自体も軽犯罪法に抵触する可能性がある。永井邦明地域官は「市など関係機関と連携して、取り締まりや指導、警告を強化する」と強調した。

 スケボーを巡っては、岩国市の錦帯橋で今月、スケボーに乗って橋板を傷つけたとして広島県内の少年が文化財保護法違反の容疑で書類送検されている。

 夜の公園での取材の終わり際、少年たちにここでスケボーをすることは罪に問われる可能性があること、多くの人が悲しむことを伝え、繰り返さないよう話した。数人は「僕らも迷惑を掛けている自覚はあった」といい、「今後は控える」と約束した。

 後日、昼間に公園を再び訪れ、水にぬらしたタオルで台座を拭いた。角が削れて丸くなり、スケボーのものか赤や黄の塗料がこびり付いている。何度拭いても汚れは落ちなかった。慰霊碑を管理する福山市福祉総務課の小林大二地域福祉担当課長は「現状を放置していいとは思っていない。まず洗剤を使って汚れが取れるか試したい」としている。

3/30(火) 8:01配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/d6fcbc3c4bb1a92f7ecf14b747977d0053277c11
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