新型コロナウイルスの感染が再び急拡大している大阪市で、飲食店を対象にした新たな感染防止策がとられる見通しとなった。
31日に大阪府が政府に適用を要請した全国初の「まん延防止等重点措置」。店でのマスク着用義務化に理解を示す声もある一方、
緊急事態宣言の解除や対策の強化に翻弄ほんろうされる店主からはため息が漏れた。

営業時間の短縮要請が4か月にわたって続く大阪の繁華街・ミナミ。
おでん屋で働く男性(59)は「感染対策は、緩めては締め付けることの繰り返し。最初は知事も頑張ってると思っていたが、
振り回されることに疲れた」と嘆く。

吉村洋文知事は府を含め、10都府県を対象に出されていた緊急事態宣言について、
2月、「社会経済活動と感染対策の両立を模索していくべき時期」として、3月7日が期限の府の解除を前倒しするよう政府に要請。
2月末、宣言対象自治体の中で京都、兵庫両府県などとともに解除された。

大阪市内には、その後も時短要請が継続されたが、宣言解除で繁華街での人波が戻るなどして感染者数は跳ね上がり、
4月1日からは時短要請の対象を大阪市内から府内全域に拡大。感染が収束する気配はなく、
府は新たに、今回の重点措置で店に対策強化を求めることを余儀なくされた。

ミナミのおでん屋では系列3店を含めてこれまで府の時短要請に従うか休業してきたが、売り上げ減少で梅田の1店舗が31日、閉店することになった。
男性は「ルールは守るが、いつまでこの状態が続くのか。我慢の限界」とこぼした。

重点措置の対象となる同市内ではさらに飲食店の営業時間が午後8時まで(現在は午後9時)に短縮される見込みだ。
ミナミですし店を経営する男性(59)は「午後7時頃からは客が多くなるので、1時間短縮はほんまにしんどい。短くするなら補償も手厚くしてほしい」と困惑気味に話した。

重点措置では飲食店内でのアクリル板や二酸化炭素(CO2)濃度の測定センサーの設置義務化も検討されている。

鍋料理が人気のミナミの日本料理店は、テーブル中央にアクリル板を設置した上で、客1人ずつに鍋を用意する方針という。
店主(69)は「具材の盛りつけも1人前ずつになり、手間も費用もかかる。行政にはきちんと補助を求めたい」と話した。

今回の重点措置では、会食時にマスクを上げ下げする「マスク会食」も呼びかけられる。

大阪市西区のイタリア料理店では3月下旬から利用客にマスク会食を勧めているが、応じるのは2割程度で、拒まれてもそれ以上の対応はしていなかった。

オーナー(69)は「これからは、拒む客にも着用を頼まなければならず、正直つらい。
でも感染が急増する中、厳しい対策も仕方なく、効果を出してほしい」と話した。

しかし、大阪市内の飲食店を利用していた兵庫県西宮市の男性(60)は「マスクを上げ下げしてまで飲むのは面倒くさい。それなら家で楽しみます」と話した。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210401-OYT1T50070/