トップは男性、支えるのは女性という構図が変わらない日本社会。
指導的地位に就く女性を増やす必要性の議論で、よく聞かれるのが「女性自身が前に出たがらない」という指摘だ。
女性はリーダーに向かないのか。元首相による女性蔑視発言がくすぶり続ける中、
「功績は代表の男性のものになる。いつものことだ」とつづった女性のフェイスブックへの投稿が関心を引いた。女性とリーダーについて考えた。 (中村真暁)

 「物を申せば生意気だの出たがりだのたたかれるから、もはや無表情で、時には作り笑いで受け流す。これが、先祖代々伝わる『女の分際』のわきまえ方」

 投稿者は、貧困問題に取り組む一般社団法人「つくろい東京ファンド」(中野区)スタッフの小林美穂子さん(52)。
発信した二月三日は、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言があった日でもあった。

 「功績」とは、法人によるアンケートを機に、生活保護利用を阻む要因となっている親族への扶養照会の運用に、改善の兆しが見えたことだ。
結果は国会でも取り上げられ、長年改善を求めてきた支援現場の人々に高揚感が高まった。

 だが、小林さんにはモヤモヤが渦巻いていた。
調査が同法人の代表理事で、夫の稲葉剛さん(51)一人の手柄のごとく伝わり、「稲葉さんはすごい」との声も聞いたからだ。
実際は小林さんの提案。稲葉さんも関わったが、収集や集計など地道な作業をした他の七人は全員女性だった。

 代表は評価や批判の矢面に立つものだが、「何か大きなことがあると代表がやったのだろうと、無意識に思うことになっている。
代表が男性ばかりの困窮者の支援団体はなおさら」と小林さんは指摘する。

 こうした受け止めをされる背景に、「女性はいつも、男性の下で支えるものという刷り込みがみんなにある」と小林さん。
同じことを述べても、男性だと褒められるのに、女性だとネガティブな反応が起きることも少なくない。
稲葉さんも「女性が社会的に発言しにくい世の中になっている」と認める。
投稿したのも「私自身が女性の立場を軽んじてきた。自分を含めたみんなの問題だと可視化し、気付いてほしかった」。
投稿には八十件弱のコメントが寄せられた。

 リーダー、男性、女性それぞれに望まれる特性を尋ねる調査が二〇一八年に行われた。
大手二十五社の役員、管理職、一般社員ら約二千五百人が回答。
リーダーに望まれる「行動力」「説得力」といった特性の多くが、男性に望まれる特性と重なったが、女性に望まれる特性との共通項は少なかった。
女性には「礼儀正しい」「気遣いがある」などが望まれた。

 この調査を行った、働く女性の取材を続けるジャーナリストの野村浩子さん=写真=は
「リーダーは男性向きで女性はふさわしくないという偏見がある可能性が浮かび上がった」と指摘する。

 調査では女性が男性よりも強く、こうした考えに偏っていた。「女性は『女性らしさ』から逸脱すると社会的制裁を受けることが少なくない。
そうならないように、無意識にも行動するのでしょう」と説明する。

 ジェンダー平等の社会にするためには、女性を含めた多様な視点が必要だとする。
野村さんは「国や企業などが無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)に気付き、
それぞれの行動変容を促す管理職の女性登用計画といった仕組みや、クオータ制などの導入も必要になる」と強調した。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/93171>>179