HPVワクチンで救える命を見殺しにしていいのか? 大手新聞社が握りつぶした幻の記事を再掲
BuzzFeed 森内浩幸(もりうち・ひろゆき)長崎大学小児科学教室主任教授(感染症学)5月20日
半分以上略したので詳しくは記事リンク先へ。
https://www.buzzfeed.com/jp/hiroyukimoriuchi/hpvv-moriuchi-yomi
(略)
※編集部注:この記事は読売新聞の医療サイトyomiDr.に「子どもにワクチンを打つ小児科医の立場から」というタイトルで 2016年8月31日に寄稿され、読売新聞の判断で削除されたものです。原稿は森内浩幸さんに著作権がありますので、古くなった情報を森内さん自身の注で更新し、見出しを変えて、BuzzFeed Japan Medicalで再度公開します。

■ワクチンで救われてきた子どもの命(略)
■H P Vワクチンとは何を防ぐのか

さて、ヒトパピローマウイルス(H P V)ワクチンの話です。ヒトパピローマウイルスにはたくさんの種類があり、一部のものは、子宮頸がんや、性器や肛門の周りにイボを作る病気「尖圭コンジローマ」を起こします。

今使われているワクチンは2種類あって、どちらも子宮頸がんを最も起こしやすい16型と18型を防ぐことができます(1種類はさらに尖圭コンジローマを起こす6型と11型も防ぎます)。16型と18型で子宮頸がんの約3分の2を引き起こしますが、特に比較的、若年で発症するのはこの二つの型が主体です。

注:2021年2月から9価のワクチンが発売されており、6, 11, 16, 18型に加えて31, 33, 45, 52, 58型も防いでくれるので、有効率が約9割になりました。(略)

■HPVワクチンの「副反応」とは何なのか?

厚労省の副反応検討部会の資料によりますと、上述の様々な症状が続いている子が186名、これに未確認分を推定して加えると276名、これは接種者の0.008%に相当します。

仮にこれが全て本当にワクチンのせいで起こったとして、ではワクチンを接種したらどうなるのか考えてみましょうか?

子宮頸がんの罹患率や死亡率、子宮頸がんのうちワクチンによって予防できる割合を計算に入れると、接種者338万人のうち2万5000人がワクチンによって子宮頸がんを免れ、7000人が死なずに済むのです。

注:この予想は、累積子宮頸がん罹患率78人に1人、子宮頸がん10年相対生存率66.1%、16型または18型が占める割合67.1%、ワクチン有効率95%から計算しています。

そして副反応と言われているものは、本当にそうなのでしょうか? この年頃の女の子によくみられる不定愁訴(原因不明の体調の悪さ)を、ワクチンのせいと思い込んでいるのではないでしょうか?

名古屋市の調査では、ワクチン接種後に起こるとされる様々な症状の出現率が、ワクチン接種者と未接種者との間で違うかどうかを、3万人の規模で解析しています。その結果、接種者の方が未接種者よりも多く訴える症状は何一つありませんでした。

注:2015年12月に出された中間報告では上記のような解析結果を出していながら、本年6月の最終報告では生データの提示だけ行って、解析を行わないという不可解な対応を取っています。

(略)

注:世界保健機関(WHO)は2019年12月に予防接種に関連する有害事象の一つとして、「ワクチン接種ストレス関連反応Immunization Stress Related Responses (ISRR)」という概念を提唱しています。ワクチンそのものによって起こるものではなく、予防接種への不安に関連して起こるストレス反応で、血管迷走神経反射[お化け屋敷などで失神するのと同じような反応]のような急性ストレス反応だけではなく、長期間に及ぶ機能性身体症状も含まれます。不安感の強い若くて痩せた女性に起こりやすく、SNSを含めた周囲が不安を掻き立てることによって助長されるとしています。HPVワクチン接種後の訴えの多くは、この概念で説明できると考えられています。

■日本で放置されている異常な状況

(略)
もしワクチンを接種すれば、2万人のうちの約1万2500人は罹らずに済み、5500人のうちの約3500人は死ななくて済むのです。
(略)

注:積極的勧奨の中止から既に8年経ち、本来なら接種されてはずの女性の数は約400万人にも及びます。このうち将来子宮頸がんを発症する人が約5万1000人、死亡してしまう人が約1万7000人です。ワクチンによって約3万3000人は罹らずに済み、約1万2000人は死なずに済むはずなのに……残念です。

■政府も学会もメディアも逃げるな

(略)若い女性・女子の皆さん、子宮頸がんって、何も特別な人に起こる特殊な病気ではありません。ごくありきたりの生活をしている人に普通に起こる病気なのです。この病気にかかる確率は、ワクチンによって何か大変な副作用を起こす確率とは比べものにならないくらい高いのです。(略)