「五輪、ステージ3なら無観客」言えぬ分科会専門家 政府が難色
毎日新聞 2021/5/31 06:00(最終更新 5/31 06:00)
https://mainichi.jp/articles/20210530/k00/00m/010/191000c

 コロナ下で、東京オリンピック・パラリンピックは開催できるのか――。この問題について、政府の有識者会議「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の感染症の専門家らが「リスク評価」の提言作成を進めたものの、出せない状況が続いている。人流(人の流れ)の抑制のため無観客開催を求めたり、東京都内の医療の逼迫(ひっぱく)がさらに深刻化したりすることを指摘する内容で、状況を見守りたい政府側の了承が得られず提出できない。政府が開催を目指す巨大事業に、専門家はどう向き合おうとしているのか。

 28日の衆院厚生労働委員会。野党議員から分科会で開催の妥当性を議論するよう要望された尾身茂・分科会長は、準備していることをほのめかしつつも「(政府から)今のところはそういうお声がかかっていない」とかわした。「このまま意見を求められなくて感染爆発が起こったら、分科会や尾身会長は職責は全うしたことになるのか」とたたみかけられたのに対し、「(大会関係者に)私の考えは述べるということはあった」と述べるにとどめた。

 分科会は感染症の専門家や知事ら17人が所属する政府の有識者会議で、内閣官房が事務局を務める。事前に中心メンバーが提言の案を議論し、尾身会長らが政府と意見をすりあわせるのが通例だ。政府の了承を得られなければ「分科会を開かせてもらえない」(分科会メンバー)のが実情だ。

 公式の会合では開催の妥当性を議論していないため、感染症や医療が専門の中心メンバーらは「開催の是非を判断する立場にはないが、感染拡大と医療への負荷のリスクを客観的に述べることが責務だ」として、限られたメンバーだけで提言案をまとめつつあった。

 関係者によると、…

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