サケの不漁が東北でも深刻だ。

2019年の全国の水揚げ量は約40年ぶりの低水準で、20年も厳しい状況が続いた。短期的な不漁とは異なるとして水産庁は検討会を設置する一方で、海外では豊漁の地域もある。謎の不漁に関係者は頭を抱える。

震災前はサケの捕獲数が本州の河川で1位になったこともある福島県楢葉町を流れる木戸川。9月下旬から11月上旬にかけてのサケの遡上(そじょう)は町の風物詩で観光資源だったが、「異変」が起きた。2020年10月末、川の浅瀬で行う木戸川漁協伝統の「合わせ網漁」を報道陣に公開したところ、1匹もかからなかったのだ。

町は東京電力福島第一原発から20キロ圏にあり、事故による避難指示で、年間1千万匹を超える稚魚放流が途絶えた。19年の台風19号で簗場が被害を受けるなど災難続きだが、20年はサケ漁復活に向けて期待が高い年だった。避難指示が解除されて2年目の16年に、稚魚を前年の3倍強の440万匹放流したからだ。

■ 鮭缶メーカー「経験ない不漁」、養殖事業に着手

サケは、稚魚を放流してから4年で母川に戻ることが多く、4年目に当たる20年は平均的な回帰率であれば2万2千匹が戻る計算だったが、結果は751匹だった。漁協の鮭ふ化場長の鈴木謙太郎さん(39)は「全国的な不漁の影響は覚悟していました」と悔しさをにじませる。

サケの不漁は全国的な傾向だ。19年度の水揚げ(1973万匹)は1978年度(1620万8千匹)以来、42年ぶりの低水準で、20年度(2017万8千匹)も5年前と比べ半分以下に低迷する。水揚げ量のうち約9割は北海道が占めるが、本州では東北が主な漁場として知られる。

影響は水産加工にも。水産食品大手マルハニチロ(本社・東京都江東区)の缶詰「あけぼのさけ」は累計の生産が約40億缶、110年を超えるロングセラー商品だ。北海道の東部沖のサケ類のカラフトマスを主に使用しているが、広報担当者は「過去に経験したことがないような不漁。予測が付かない」と危機感を強める。同社は豊漁、不漁に左右されない養殖事業にも着手。山形県遊佐町でサクラマスの実証実験を行い、事業化に向けた研究を続けている。

https://news.livedoor.com/article/detail/20319176/