https://news.yahoo.co.jp/articles/266d59340999e7e5fc77c7a406d6a3775d9ebad7?page=1

今に始まったわけでない健康の自己責任論
ーー糖尿病を「本人のだらしない生活のせいだ」と見る目は強まっているのでしょうか?

これは今に始まったことではなく、2013年に麻生副総理・財務相が「食いたいだけ食って、飲みたいだけ飲んで、糖尿病になって病院に入っているやつの医療費はおれたちが払っている」と発言したことがあります。

いつもの暴言だろうと思っていました。その2ヶ月前に、高齢者の医療について、「政府のお金で終末期医療をやってもらうのは、ますます寝覚めが悪い。さっさと死ねるようにしないと」と発言して撤回していたからです。

今度もまた撤回するのだろうと思っていたら、この発言について「その通りだ」と支持する声がTwitterで多く上がりました。

糖尿病に関する誤解が社会一般に広がっている危険な兆候だと思い、糖尿病学会などに声明を出すよう呼びかけたのですが、実現しませんでした。

やむなくその時は1人で、新聞に反論の寄稿を出しました。

その後、糖尿病学会の専門医の間でも、一般市民に誤解が広がっていることが認識され、糖尿病を患う人に対する偏見があることが問題とされたのです。

2019年の11月から糖尿病学会・糖尿病協会連名で、糖尿病を患う人々に対する偏見に対する反対キャンペーンが展開されるようになりました。

ーーしかし、糖尿病診療ど真ん中の医師ではなく、先生のような公衆衛生の研究者がこうした活動に参加した意味は何なのでしょう?

専門医は、糖尿病が遺伝や生活習慣など様々な要因が複合して発症する病気だとはわかっているのですが、個人を取り巻く社会環境が左右する「健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health、SDH)」という概念はまだ普及し始めたばかりです。

社会の問題となると、「それは病院の外の話でしょう?」「医者は関係ない」「政府がどうにかしてくれ」と蚊帳の外扱いになりやすいのです。だから私のような外様の研究者が加わったのです。