Withnews2021/06/19
https://withnews.jp/article/f0210619003qq000000000000000W0bx10701qq000023189A

業界の「二つの基準」により、ネットで大々的に広告される加熱式たばこ。メーカー側の「これは『たばこ』の広告ではない」という主張を、広告が配信されるメディアや専門家はどう受け止めるのか、話を聞いていきます。(朝日新聞デジタル機動報道部・朽木誠一郎)

5年で普及、ネットで宣伝の影響
加熱式たばこがネットで大々的に広告されています。業界団体が設定する自主基準によれば、ネットにおいて、たばこの広告には公的な証明書などによる厳密な年齢確認が必要。

一方、加熱式たばこについてはスティックやカプセルなどの「たばこ部分」と、たばこ部分を加熱する「デバイス部分」に基準が分かれており、デバイス部分は年齢確認が自己申告でいいなど、広告しやすくなっています。

メーカー側は「『たばこ』ではなく『デバイスのCM』」という論理を持ち出しますが、たとえば「たばこにしか火をつけられないライター」があったとして、その使用環境をプロモーションするのは、たばこのプロモーションと何が違うのでしょうか。

ここで、代表的な「加熱式たばこ」であるフィリップ モリス ジャパンのIQOS(アイコス)が日本で全国発売されたのは2016年のこと。

現在、国内ではブリティッシュ・アメリカン・タバコのglo(グロー)、そして日本たばこ産業(JT)のploom(プルーム)の3種類の加熱式たばこが主に販売されています。

これら3社とも、バナー広告などでネット広告を展開しています。そして、アイコスとプルームについては、ネットで地上波テレビ番組のアーカイブを視聴できる無料サービス「TVer」でもCMを放送しています。

TVerは月間アクティブユーザー数が2021年3月時点で約1700万、再生数は約1億8000万回と人気のサービス。ここでは2020年2月に、まずプルームがCMの放送をスタートしました。そして2021年3月にはアイコスもそれに続きました。

加熱式たばこの中では、アイコスのシェアが7割とされ、圧倒的です。プルームのシェアは1割ほどとみられ、ネットテレビという新しく勢いのあるサービスで宣伝することでプルームが巻き返しを図る中、アイコスもそこに参入という構図になります。

2020年時点での加熱式たばこの市場占有率は26%(JT推計)。5年ほどで急速に普及している理由としては「煙やにおいが気にならない」などがよく聞かれます。

業界団体の自主基準により、テレビではたばこ製品の広告はできません。既存メディアで広告がしにくい以上、紙巻たばこからの切り替えには、こうしたネットでの宣伝が強く影響していると言えます。

ここで、たばことデバイスを区別する宣伝は、妥当と言えるのでしょうか。ネット広告の健全な発展を目的とする一般社団法人が日本インタラクティブ広告協会(JIAA)です。同協会の担当者に話を聞いてみました。

同協会の担当者は「法的な問題点がなく、業界団体の自主基準に則っているのであれば、協会として問題はないと考えます」とします。その上で「ただ、協会内の会議でも『広告を閲覧する消費者にとって、たばことデバイスを分ける意味があるのか』という議論はありました」と明かします。

「実際には、たばこ部分とデバイス部分の区別によらず、『加熱式たばこのCM』として広告を表示するかどうか判断する媒体が多いのではないでしょうか」

グーグル、ツイッターは「禁止」
実際、媒体側の判断はさまざまです。

ネット広告大手のグーグルは、たばこが広告掲載ポリシー「危険な商品やサービス」に該当するとして、紙巻たばこ・電子たばこ※と共に、加熱式たばこはデバイス部分も含め、広告を認めていません。

※ニコチンを含むリキッドを加熱して発生する蒸気を吸引するたばこで、加熱式たばことは別物。国内ではニコチンを含むリキッドは医薬品、それを加熱・吸引するデバイス部分は医療機器に該当し、一般に販売されていない。

世界的には日本よりもたばこの広告規制が厳しいので、グローバル企業ではグーグルだけでなく、ツイッターなども、加熱式たばことそのデバイスを含むたばこ製品や関連器具のプロモーションを全面的に禁止しています。

一方、同じネット広告大手でも、ヤフーは「加熱式たばこのたばこ部分・デバイス部分ともに広告可能」であることを明かしました。広報担当者は「現状掲載されている広告に対してのユーザーや世間の反応を確認している」とコメントしています。