● 日本の驚異的な「安さ」は 働く人の我慢と犠牲が支えている

 日本と米国を行ったり来たりしていると、日本の物価の安さは「お手頃でうれしい」を通り過ぎて心配になるほどです。コンビニエンスストアでどっさり買い物をしても1000円にならないし、家賃も安い。

 日本には500円で買える「ワンコインランチ」という言葉がありますが、ニューヨークだと5ドルじゃサンドイッチ一つだって買えません。大人気のラーメンだったら1杯20ドル(約2200円)以上。替え玉やトッピングをして、ビールも飲むと50ドル(約5500円)です。

 だいたい、ワンコインランチって常軌を逸していると思います。500円のお弁当の背後には、おかずをせっせと詰めている人がいるわけです。その人たちはちゃんとした時給をもらえているんだろうか。心配になります。日本の物価の安さの裏側にあるのは、やっぱり賃金の問題じゃないでしょうか。

 日本で働く人は、企業に利用されちゃっている面がありませんか。本当ならもっとお給料をもらうべき仕事でも、文句を言わず我慢して、手も抜かずに働くでしょう?そこにある種の美しさはあるのですが、結果として経営者に安く使われている労働者が多いのでは。安い日本というのは、こういう我慢している人たちの犠牲の上に成り立っているのだと思います。

 これが米国だったら、給料が仕事に見合わないとなると、働く人はすぐ手を抜きます。口に出して「自分は犠牲になっている」って言います。そしてそんな仕事なんかさっさと辞めて、もっといいチャンスを見つけに行きます。

● 低い給料こそが日本社会に 閉塞感をもたらす原因だ

 日本には「お金のことを言うのは下品だ」という考え方が何となくあります。でも働いて生きていく限りは、仕事に見合った給料や報酬が絶対に必要です。それなのに頑張る力も出なくなるような低い給料だと、「自分ばかり負担を負わされている」という感覚に陥ってしまう。

 そしてどんどん内向きで保守的になり、他人に対しても先入観に満ちた、シニカルな判断をするようになる。何だか閉鎖的で、出るくいを打つ的な感じです。これが日本社会全体の閉塞感につながっているように思います。

 僕自身、そんな日本の空気を米国にいながら感じています。ポップミュージシャンをやめてニューヨークでジャズをやっていることに対して、日本からは冷笑的だったり上から目線でちゃかす感じだったりという反応をもらうことがあるのです。

 確かにアジア人が米国に来てジャズで食べていくのは、決して楽じゃない。でも、米国人というのは個性を重んじ、世界に一つしかないものに高い評価を与えてくれる人たちです。そういう文化であり、価値観の国です。

 僕は米国でこれまでに数回、とても大きな企業の経営者から、こんなふうに声をかけてもらったことがあります。「ジャズミュージシャンには、その才能に投資してくれる人が必要なんだよ。君にはそういう人がいるかい?いないのなら、僕の名刺をあげる。僕に何かできることがあったら、メールを送ってね」。音楽ジャンルの違いはありますが、少なくとも日本でポップミュージックをやっていたときには、こんなふうに声をかけられた経験はありません。

 米国でももちろん、「もうかるかどうか」はとても大事です。ただ、もうかるという概念が指すものが、日本と少し違うように思います。経営者がお金を使って手に入れられるものは、お金だけじゃない。尊敬できる人物として世に名前を残すことだったり、自分の会社に何らかの「意味」をもたらすことだったりです。

 お金が紙幣などの形で循環しているのは日本と同じですが、そのお金にくっついて別の何かを与えられたり、与えたりする感覚が、米国にいるとあるのです。

https://diamond.jp/articles/-/280295

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