山口啓太、長野佑介2021年9月6日 16時00分

写真・図版
「コロナバカヤロウ」の看板=2021年8月20日午後3時5分、東京都渋谷区渋谷1丁目、長野佑介撮影
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 新型コロナウイルスの感染拡大で窮地が続く飲食業界。東京都内の多くの店では緊急事態宣言による休業や営業時間の短縮を伝える貼り紙や看板が掲げられている。文字からにじむ店主らの苦悩や葛藤、希望……。気になる言葉の真意を聞こうと、店を訪ねた。(山口啓太、長野佑介)






看板を見た客「ほんとこの通り」

 「コロナバカヤロウ」

 今、誰しもが思う気持ちを店の看板に掲げたのが、渋谷駅近くにある「しょうが焼きBaKa(バカ)渋谷宮益坂店」だ。両面ある丸形の看板に、片面に店名を記し、もう片面にコロナ禍を真っ正面から訴えた。店のマネジャーの中村優里さん(40)は「お客様から『よくぞ言ってくれた』なんて声ももらいます」と話す。

 店のオープンはコロナ禍まっただ中の3月。希望エリアにテナントの空きができたタイミングだったこともあり、出店を決めた。昨年末、社内で出店計画を話し合う中で「コロナバカヤロウ」を記す案が出た。コロナ禍で飲食業だけでなく、みんなつらい、笑えない状況だ。それでも「お店に来たときくらいはくすっと笑ってほしい」。社内で意見が一致した。

 度重なる休業や営業時間の短縮要請で7月からはテイクアウトだけの営業に切り替えた。売り上げは想定を大きく下回る。それでも「ほんとこの通り」「大変ですけど、お互いがんばりましょう」といった客の反応に「救われている」と中村さん。「看板からコロナの文字を消せる日が来たらいいな。そう思っていまがんばっています」

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