若者たちが温暖化対策で政治家に迫った 「私たちの未来を考えて」「選挙権ない若者の命がかかっている」
 「みなさんが決定することに、投票する1票に、選挙権を持たない若者の命が懸かっています」。中学3年の角谷樹環かどやこだまさん(15)は、声を震わせて訴えた。地球温暖化への対策を巡り、若者たちが17日実施した各政党の政策担当者とのオンライン討論会。授業の合間を縫って準備し、衆院選公示直前の開催にこぎ着けたのには、はっきりとした理由があった。(小川慎一)

◆衆院選公示前の開催を実現
 「国会が真剣に私たち若者の未来を考えてくれるようにしなければならない」
 17日夜に動画投稿サイト「ユーチューブ」で生配信された討論会の最後の場面。北海道からオンラインで参加した角谷さんの言葉には、企画した若者たちの危機感が詰まっていた。
 討論会は温暖化対策の強化を訴える若者グループ「Fridays For Future Japan(FFF)」が主催した。二酸化炭素(CO2)を主とする温室効果ガスの排出を削減しなければ、平均気温が上がり豪雨や干ばつが増え、氷河が解けて海面上昇するなど大きな影響が出る。「気候危機」への対策実行は世界的に急務だ。
 東京都内の大学1年冨永徹平さん(20)と神奈川県の高校2年原有穂さん(16)が司会を務め、質問をぶつけたのは角谷さんと都内の高校3年山本大貴さん(18)。男女4人のうち、有権者は2人という構成で臨んだ。

◆「若者の声は重視されていない」
 準備は9月25日ごろに始めた。オンラインで議論を重ね、10個以上の質問を「2030年以前の石炭火力廃止を目指すか」「原発を廃止する予定はあるか」など○×形式で答えられる4個に絞った。冨永さんは「中高生もいて、政党との討論会の経験がなく、NGOなどに質問しながら形にした」と苦労を明かす。

 2時間超の討論会では、温室効果ガスを大量に出す石炭火力発電や、政府が脱炭素電源と重視する原発への姿勢で各党の違いが明確になった。「政策決定の方法に若者など一般市民の意見が取り入れられていると考えるか」という質問を巡るやりとりは熱を帯びた。
 ほとんどの政党の担当者が「×」とし、角谷さんは「なぜ意見を取り入れる制度がないのか」と問う。与党議員から「これまでの慣習では若者が政治に参画していなかった。誰も疑問に思わなかったことにメスを入れていくのが政治の役割」との回答を引き出した。

 衆院選が初めての投票となる山本さんは、討論会をこう締めくくった。「若者の声はいつもあまり重視されていない。市民の声っていうのをとにかく反映してほしい。ぜひみなさんで、実現していただきたい」

東京新聞 2021年10月19日 05時50分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/137514