11月17日(水)17時0分 カラパイア
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以前から社会問題となっている「引きこもり」は、仕事や学校に行けず家にとじこもり、半年以上家族以外とほとんど交流がない人の状況を指す日本語だが、今やその言葉は「Hikikomori」として世界共通語になっている。

誰でも時にはひとりになりたいと思うものだし、ひとりで過ごす時間は己のアイデンティティを追求する上で大切なものだ。

しかし立ち上がるきっかけをつかむことができず、長期間いつまでも続くようなら、本人だけでなく、家族全体の人生を狂わせてしまう。

名古屋大学の精神医学者、古橋忠明准教授などが『The Conversation』に寄稿した記事によると、昨今のコロナ禍で引きこもりが増加するリスクが世界的に高まっているという。

1990年代の就職氷河期に誕生した用語「引きこもり」 日本では約100万人が経験しているとされる「引きこもり」という言葉は、1998年に精神科医の斎藤環教授が考案したと言われている。

当時、日本は就職氷河期と呼ばれる時代で、多くの若者たちが就職活動に挫折していた。その羞恥心に耐えられなかった彼らは、人目を避けるために他者との交流を断ち、自室から出てこなくなった。

そうした若者たちの症状は、深刻なものでありながら、従来の精神疾患の診断基準に当てはまらなかった。

引きこもりの定義は6か月以上 現在、引きこもりははっきりとした精神疾患ではなく、社会文化的なメンタルヘルス現象だと考えられている。

その特徴としては、まず「6か月以上、家庭にとどまり続けている状態」が挙げられる。

彼らは「意味のある社会的関係から切り離され」、「著しい苦痛を感じて」いる。また「誰かと関わる可能性がある行為を避け」、「基本的なセルフケア」をしない。

物理的に孤立しているだけでなく、「心理的にも極端なまでに社会から離れて」おり、学校や職場など、人と積極的に関わらねばならない場所に行けなくなる。

中にはインターネットを通じて外の世界とつながる人もいるかもしれないが、人付き合いはしないことが多い。

羞恥心や挫折がきっかけ 引きこもりのきっかけになるのは、試験の落第や就職の失敗といった、羞恥心や挫折のトラウマであるようだ。

ただし日本の場合、集団として同一であることへの圧力や人目を気にする意識が強いことが、いっそう人々を引きこもりに追いやっている可能性がある。

そうした人たちは、社会によって定められた”普通”の人生から身を引くことで、もう二度とトラウマを味わうことがないよう身を守っているのだ。

フランスの引きこもり 一方、フランスにはまた別の特徴がある。

古橋准教授らがフランスで行った調査よると、フランスの引きこもりの多くは、社会から忘れられたいと考えているようだ。

にもかかわらず、自分が捨てた世界を忘れられないし、そうしようとも思っていない。オンラインゲームやSNSを介して、”社会的死”の状態で世界を受動的に観察する。

また自閉症、うつ病、社会不安症、広場恐怖症との関連性も指摘されている。

生活に困らないゆえに助けを求めない 引きこもりは、本人だけでなく、家族の生活にも大きな影響を与える。

一般に引きこもりの親は、子供が生活できるようきちんと面倒を見る。しかし、このために引きこもりの人が周囲に助けるを求めるきっかけが失われてしまう。

メンタルヘルス・社会的ケア施設や教育機関などの注意は、もっと目につきやすい問題に向かいがちだ。

その結果として、家族全体が行き詰まり、孤立を深めていく。コロナ禍が引きこもりの引き金になる恐れ またコロナ禍による苦境は、引きこもりを増やす恐れがあると、古橋准教授らは警鐘を鳴らす。

社会経済活動が停滞したおかげで、将来を悲観したり、失業して挫折を味わっていたとしたら、それが引きこもりの引き金になると考えられるからだ。

一方、リモートワークの普及といったライフスタイルの変化は、以前に比べれば引きこもり生活を許容できるものにする可能性もある。

引きこもりから立ち直るには? 引きこもりから立ち直る方法としては、「身体活動」「社会と関わる力の回復」「学校や仕事への復帰へ向けた段階的なアプローチ」などが主なやり方だ。
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