【ロンドン=篠崎健太】13日の欧州エネルギー市場で天然ガス相場が急伸した。欧州の指標価格であるオランダTTFは前週末比で10%強上げ、10月上旬以来約2カ月ぶりの高値水準をつけた。ロシアとドイツを結ぶ新たなパイプライン「ノルドストリーム2」をめぐり、米政権が稼働阻止を辞さない姿勢を示したことで供給不安が意識された。冬季で在庫の取り崩しが進むなか需給逼迫の不安が長引いている。

金融情報会社リフィニティブによると、オランダTTFは翌月渡しの取引で一時1メガワット時あたり118.80ユーロと、前週末より13.45ユーロ(12.8%)上げた。過去最高値を記録した10月6日以来の水準になった。翌日物や2月、3月渡しの取引も軒並み1割あまり上げた。

買いを呼んだのはブリンケン米国務長官の発言だ。12日に米NBCテレビでノルドストリーム2について、ロシアがウクライナに侵攻すれば「(ガス輸送は)非常に難しくなる」と述べ、ロシア側をけん制した。

パイプラインは既に完成しているが、ドイツが11月に認可手続きを中断して稼働に至っていない。トラス英外相が11月に英紙への寄稿で「ノルドストリーム2は欧州の安全保障を損なう」と批判するなど、ロシア依存をさらに強めるとして反対論も根強い。市場で早期稼働への期待はしぼんでいたが、ウクライナ情勢の緊迫でロシアからの供給不安が再び強まってきた。

日本経済新聞 2021年12月14日 7:16 (2021年12月14日 7:26更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR140870U1A211C2000000/?n_cid=SNSTW005