新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)された2021年。秋以降、流行の波も収束したかに見えたが、
新しい変異株「オミクロン株」の登場で、先行きに不透明感も漂う。22年、我々はコロナを克服できているのだろうか。

免疫学の第一人者として知られる宮坂昌之・大阪大名誉教授に話を聞くと、希望も見えてきた。【聞き手・中川友希】

第5波収束 背景に短期間での接種率
 ――21年の日本の感染対策をどのように評価していますか。

◆日本の新型コロナの感染状況を振り返ると、21年夏の「第5波」はすでに収束していて、
感染者数や死者数も人口100万人当たりでみれば欧米よりはるかに少ないです。
政府対応が「後手に回った」と言われますが、日本の感染対策はそれなりに成功したと私は評価しています。

なぜうまくいったかと言えば、日本は「後出しじゃんけん」ができたからです。
例えば、新型コロナのメッセンジャー(m)RNAワクチンは、日本は欧米より後から使い始めました。
その間に海外で安全性のデータが蓄積されたおかげで、これなら日本でも使えると分かったのです。

高齢者への接種開始から半年あまりで、2回接種をした国民が7割に達したことも大きな要因です。
これほど短期間で高い接種率を達成した国は、世界でもそう多くありません。

ワクチンは、接種を受けた本人が感染しにくくなるだけでなく、吐き出すウイルスの感染力も減らすため、
他人に感染させにくくなります。ワクチンの効果が持続する約半年という短い期間で接種率を一気に上げたことで、
流行の波をぐっと抑えることができたのです。

米国など他の国は早くから接種を始めたのに、十分に感染者が減らず、
接種率が上がりきっていないうちに感染対策を緩めたため、感染が制御できなくなりました。
日本は、こうした海外の状況を見て対策を緩めなかったおかげで今の状態に至っていると思います。


楽観できない新型コロナの飲み薬


――海外との違いは何でしょうか。

◆例えば、新型コロナを「雨」だとしましょう。ワクチン接種を2回受けることは、少し厚手の「トレンチコート」を着るようなものです。
トレンチコート(ワクチン2回接種)は少しの雨(新型コロナ)なら防げますが、たくさんの雨は防げないということです。

海外では、人口100万人当たりの新規感染者が日本の数百倍のところもあります。
降ってくる「雨」の量が日本とはまるで違うわけです。ワクチン効果の低下も相まって、
接種後に感染する「ブレークスルー感染者」が増えてしまいました。

もう一つは、ワクチン接種が進んでいない子どもに感染が広がったことです。
家庭内で感染するため、ロックダウン(都市封鎖)も効かなくなります。


――飲み薬など新型コロナ治療薬はどう評価されますか。


◆現時点で…
https://mainichi.jp/articles/20211230/k00/00m/040/191000c