中日スポーツ 1/18(火) 12:00

◇第4回「これは名古屋弁?」その1

 実は名古屋が発祥、由来だったという古今東西の事象を取り上げ、トコトン深掘りする企画。今回は世の中に浸透している名古屋ルーツの言葉、つまり名古屋弁にスポットを当てる。第1弾は『まるっと』。意味は「丸ごと」で、今ではテレビなどで耳なじみとなっている語句ながらもともとは方言で、しかも名古屋弁という説がある。「まるっと」を改めて検証する。

 『まるっと』は奇天烈な言葉だ。21世紀に入ってテレビメディアを中心に急に広まり、今では当たり前のように使われるようになった。

 TBS系で毎週土曜朝に放送されている情報番組「まるっと!サタデー」があり、NHK名古屋放送局が制作するローカル情報番組にも「まるっと!」が存在する。

 このほか、マルホン胡麻(ごま)油のCMでも「まるっと、本物〜」のフレーズが使われ、最近ではホンダの定額購入プラン「楽まる」でも「まるっとコミコミ」とうたわれている。

◇国立国語研究所の朝日教授「方言」と断言
 これだけ普及していると、いわゆる標準語と思われがちだが、国立国語研究所の朝日祥之准教授(48)は「標準語ではなく、方言から来ている」と断言し、「ただ、全国的に流通するようになっているのは確か。共通語になりかけている言葉」とする。それを証拠に、その語句の世の中への定着度の目安と考えられることが多い『広辞苑』(岩波書店)に、この単語は存在しない。

 では、どこの方言か。愛知県弥富市在住で名古屋弁に詳しい音楽研究家の服部勇次さん(81)は「尾張地方で昔から使われていた」と指摘しており、名古屋弁を裏付ける複数の文献も存在する。

 例えば、戦前の1932年に発刊された『尾張の方言 続編』(加賀紫水著)には「全部」という意味で掲載され、72年の『ナゴヤベンじてん』(荒川惣兵衛著)でも「まるまる、完全に」と紹介されている。このほか『岐阜弁笑景スペシャル・パート2』(神田卓朗著)では岐阜弁として扱われており、愛知、岐阜の方言であることは間違いないようだ。

 地方の言葉がいきなり“全国区”になった理由として有力な説がある。2000年にテレビ朝日系で始まった仲間由紀恵主演の連続ドラマ『TRICK(トリック)』だ。奇妙な事件のトリックを暴いていく内容で、シリーズ化や映画化もされた人気作。マジシャンの主人公が放つ決めゼリフとして「おまえのやったことは全てお見通しだ!」が話題となった。

 このセリフには各放送回でアレンジがあり、02年の第2シリーズ『TRICK2』の第3話で「まるっとお見通しだ」のセリフが初登場。関連書籍として『超天才マジシャン・山田奈緒子の全部まるっとお見通しだ!』(ワニブックス)も出版されるなど、その後は劇場版を含めて「まるっと」が多く用いられた。

◇ドラマ演出の堤幸彦さんは名古屋市育ち
 実はドラマを演出した映画監督で演出家の堤幸彦さん(66)は三重県生まれの名古屋市育ち。本人も「『TRICK』で使ったのは確かに名古屋時代に日常語で使っていた記憶に由来する」と認めており、このドラマをきっかけに“ブレーク”したといえる。

※続きはリンク先で
https://news.yahoo.co.jp/articles/44dc912a400d03cefa3f40fa96b6c6fe095b8517
ドラマ「TRICK」の関連書籍として2004年に発売された『超天才マジシャン山田奈緒子の全部まるっとお見通しだ!」(ワニブックス刊)
https://i.imgur.com/SDEYzza.jpg
方言に詳しい国立国語研究所の朝日祥之准教授(鶴田真也撮影)
https://i.imgur.com/8MLnvER.jpg
瀬戸市役所の「まるっとミュージアム課」=愛知県瀬戸市の瀬戸蔵で(鶴田真也撮影)
https://i.imgur.com/3m4jQ1S.jpg