横浜市内で昨年、ポータブル電源が出火原因とみられる火災が少なくとも3件あった。横浜市消防局によると、火災現場から見つかったポータブル電源に、内部から異常発熱した形跡があったという。消費者庁は強い衝撃を与えたり、水にぬらしたりしないよう注意喚起している。

 ポータブル電源は内部のリチウムイオン電池などを充電して使う比較的大容量の充電池。携帯電話のほか、タイプによってパソコンやテレビ、扇風機なども動かすことができるため、災害対策やアウトドアといった用途で利用されている。

 消防局によると、昨年1月、横浜市中区の横浜第2合同庁舎2階で厚生労働省の麻薬取締部横浜分室が入る事務所の一角が焼けた。ポータブル電源2台を充電中だったという。

 同年4月には同市磯子区のマンション駐車場で乗用車が焼けた。車内にはポータブル電源があったが、充電中ではなかった。

 同年5月28日未明には同市戸塚区の木造2階建て住宅から出火し、計2棟が全焼した。1階でポータブル電源を充電中だったといい、就寝中だった住人男性が手足にやけどを負った。

 消防局による調査の結果、いずれのポータブル電源にも何らかの原因で異常発熱した跡があった。内部から発熱したとみられることや、周りの燃え方が激しいことなどから、消防局はポータブル電源の異常発熱が火災原因になった可能性があるとみている。

 消費者庁が2010年以降に集めた情報によると、焼け跡でポータブル電源が見つかった火災は全国で少なくとも29件発生。初めて確認された17年は3件、18年は0件、19年は9件、20年は8件で、21年は7月までに9件起きた。

 29件のうち3件はポータブル電源の内部で異常発熱があり、1件は誤った使い方で出火したと推定されている。残る25件の出火原因は原因調査中か調査の結果、原因不明だった。29件に横浜市の3件が含まれるかどうか、同庁は公表していない。

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災害対策やキャンプ向けに人気
 ポータブル電源は、停電に備えた防災対策の個人需要が多く、キャンプ用や離島の自治体の備蓄用といった引き合いがあるという。

 19年からポータブル電源を販売するJVCケンウッド(横浜市)によると、国内メーカーは少なく、海外中心に主なメーカー数は10社程度。流通量に関する公的な調査はないが、同社は国内では20年の1年間に前年の約2倍となる約30万台が売れ、市場規模は約120億円に上るとみている。

 多くのポータブル電源には、温度の異常を感知した際に機能を停止する回路があり、本来は異常発熱や発火は起こらない。ただ、炎天下の車中に放置されたり、強い衝撃や製造時の異物混入などにより内部でショートしたりすると、異常発熱する場合もある。

 消費者庁によると、ポータブル電源はエネルギー量が多い分、事故時の発熱量も大きくなるといい、同社では、製造時に独自の試験項目を設けるなどして安全性を確保している。

 安全に使うためには、何に注意すればいいのか。消費者庁の担当者は「ポータブル電源は、災害時の備えなどのために広く販売されている製品で一概に危険というわけではない」と話す。一方、ポータブル電源が原因とみられる火災の発生を受けて昨年8月、消費者向けに注意喚起の文書を出した。注意点として製造・販売元がはっきりしている製品を選ぶ▽リコール対象製品となっていないか確認する▽防水性能レベルを確認する▽機種ごとの定格出力を守る、などを挙げた上で「何かにぶつけたり落としたりして内蔵電池が破損していた場合には、時間が経ってから発火するおそれもある」と指摘する。(土居恭子、黒田陸離、小寺陽一郎)

朝日新聞 2022年2月13日 10時30分
https://www.asahi.com/articles/ASQ2D6VQ7Q1CULOB01D.html?ref=