スマホにマイナカード機能搭載、なぜiPhoneは未対応なのか?
4/22(金) 7:05配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/142f2125cf405828cb35484e47fc46e63484feed

 マイナンバーカードの機能がスマホに搭載されるようになる。しかし、当初はAndroidのみで、iPhoneはしばらく先になりそうだ。

 総務省は4月15日に、マイナンバー機能をAndroidスマートフォンに2022年度中に搭載を目指すことを明らかにした。一方で、国内で最大シェアを持つiPhoneについては早期の実現に向けて検討を進めるとしている。なぜAndroidだけでiPhoneはまだなのか。

 

スマホにマイナンバーカードの機能搭載の仕組み
 今回の搭載の仕組みはこうなっている。まずマイナンバーカードには、物理的な写真付き公的身分証明書としての機能と、電子証明書を搭載したICチップという2種類の機能がある。電子証明書と暗証番号を利用すれば、電子的に本人であることを証明できる。

 スマホ搭載においては、電子証明書の機能をスマホに持たせる。これは証明書をコピーするのではなく、スマホ内に電子証明書を新たに作成し、マイナンバーカードの電子証明書を利用してそれが確かに所有者の証明書であることを保証する形を取る。具体的には、スマホでマイナンバーカードを読み取り、暗証番号を入力して、スマホ内の電子証明書を認証する。

 このとき、スマホ内で電子証明書を保存するのが、セキュアエレメント(SE)と呼ばれるスマホ内のセキュリティチップだ。SEはApple PayやGoogle Payなどの決済サービスにおいても、クレジットカード情報などの保存に使われている。

 今回マイナンバーカードのスマホ搭載の技術面を開発した、デジタルアイデンティティ推進コンソーシアム理事/情報セキュリティ大学院大学の辻秀典客員教授は、「マイナンバーカードのスマホ搭載は総務省が5年前から検討していたが、技術的に現実的な解がなかった。それに対してSEを使おうと提案した」と経緯を話す。

 SEの利点はセキュリティの高さだ。SEはOSとも切り離されており、他のアプリからもアクセスできない。スマホ内にありながら専用のサーバを通じてだけアクセスできる領域となっている。「SEに触れられるのは国のアプリだけ。そのアプリと民間サービスが連携するAPIを用意する予定だ」と辻氏。こうした仕組みで、セキュリティを保ちつつ、利便性を高められる。

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 ところがSEを利用するにはOSの機能を使う必要がある。これが「Androidは解放されているが、iOSでは解放されていない」(辻氏)。そのため、iOSでも使えるようにアップルに働きかけている最中だという。

 アップルは目算が立たない交渉にはすぐにNGを出す。またスマホ決済の際にも、アップルはSEの解放に極めて慎重だった。しかし交渉は継続しており、前向きに検討が進んでいるというのが関係者の見方だ。一方で、これを実現するにはiOS自体の改修が必要になる。仕様が確定して1年で開発、翌年リリースという流れを考えると、これが実現するのは最速でもその次の秋(23年秋)となる。

 スマホにマイナンバー機能が搭載されると、本人認証などにおいて利便性が大幅に高まると期待されている。これまでは、スマホでアプリを立ち上げてマイナンバーカードを読み取り、暗証番号を入力する必要があったが、アプリで顔認証や指紋認証を行うだけで本人認証が完了するからだ。

 デジタル庁でマイナンバーカードに関わる国民生活グループの上仮屋尚参事官は「電子証明を使う用途について、すべてスマホで可能になる」と期待する。その上で、やはり重視しているのはセキュリティだ。SEの仕組みもそうだが、そもそもスマホに搭載するのは電子証明書だけ。世間で不安視されることもあるマイナンバー、個人番号はスマホには登録されない。

 利便性とセキュリティの最適なバランスを目指した、スマホへの搭載。普及へのカギは、やはりセキュリティ不安をどう払拭できるかだろうか。