https://www3.nhk.or.jp/lnews/saga/20221111/5080013193.html
 弥生時代の大規模な環壕集落跡が残る佐賀県の吉野ヶ里遺跡で、奈良時代のものとみられる、重さをはかるための青銅製の重りが出土しました。
記者会見した佐賀県文化財保護室は、この一帯が奈良時代も行政の拠点だったことをうかがわせる重要な発見だとしています。

県文化財保護室によりますと、出土したのは「権(けん)」と呼ばれる重りで、円柱に傘をかぶったような形で、高さ2.9センチ、幅は最大で3.4センチで、
重さは82.541グラムあり、青銅でできています。
形状などから使われていたのは8世紀の奈良時代ごろで、行政機関などでモノを測るための重りとして使われていたとみられるということです。

この一帯では過去にも奈良時代の建物の跡などが見つかっていて、当時の行政の拠点である「郡衙(ぐんが)」があったのではないかと指摘されてきましたが、
今回の発見によって、その可能性が極めて高くなったということです。
石や土でつくられた「権」は各地で見つかっていますが、青銅など金属製のものは珍しく、佐賀県内ではこれが初めてで、九州でも10例目だということです。

佐賀県文化財保護室の白木原宜室長は
「吉野ヶ里遺跡は弥生時代が中心だが、奈良時代もこの地域の中心だったという可能性が高まっている。
吉野ヶ里遺跡はすごい可能性を秘めた重要な遺跡だということを再認識した」と話しています。

今回出土した重りは、吉野ヶ里歴史公園の展示室で今月20日から28日まで展示されます。
吉野ヶ里遺跡ではことし9月から、これまで手がつけられてこなかった遺跡のほぼ中央部で、10年ぶりの本格的な発掘調査が進められています。

【発見は一般向けの発掘体験場】
「権」が見つかったのは、発掘調査が始まる以前にあった神社につながる参道の石段から、6メートルほど離れた場所でした。
吉野ヶ里歴史公園では、一般向けの発掘調査体験でこの場所を使用する予定になっていて、当時、調査員による発掘調査が行われていたということです。
出土したとき、現場にいた職員は皆、手を止めて発見された場所に集まって喜び合ったということです。
当時、現地で作業をしていた佐賀県文化課の吉田健祐主事は
「吉野ヶ里遺跡では弥生時代だけでなく、ほかの時代の遺構や遺物も見つかっている。今後はさらに、奈良時代や中世の建物の跡も見つけていきたい。
まだまだ見つかる余地があるので、これからの発掘に期待してもらいたい」と話していました。

【高校生「使われ方気になる」】
福島市から修学旅行で訪れた高校2年生の男子生徒は
「米や収穫したものの重さをはかっていたのかなと思いますが、気になります。奈良時代のものが見つかったということは、この辺りは住みやすかったのかなと思います。
弥生時代のあと、一帯がどう使われていたのか知りたいです」と話していました。

また、熊本市から旅行で訪れた20代の男性は
「タイムカプセルみたいですね。どうやって使うんだろうという感じです。傘の部分にその時代の人々のセンスが見えますね」と話していました。