学び

2022.12.12


全国の学力調査・体力テストの両方で常にトップクラスを誇る福井県には、同県の小学校として初めて、午前5時間制を導入した福井市立酒生(さこう)小学校があります。その学校の校長・松村聡先生に、主要な勉強を午前に一気に済ませるメリットを聞きました。





さまざまな課題にアプローチするために午前5時間制を導入

学生のころを思い出してほしいのですが、給食後の午後の授業は集中できましたか? お腹いっぱいの午後は、ちょっと集中力が落ちた、あるいは眠かったという人も少なくないと思います。

どうしても集中力が落ちがちな学校の「5・6時間目問題」にメスを入れようと、5時間目までの授業を午前中にこなし、単純な座学とは異なる自由度の高い活動に午後の6時間目を割り振る小学校が、全国には少数派ながら存在します。

例えば、東京の目黒区には、20年近く前から午前5時間制を導入する学校が幾つか見られます。同様の取り組みを今年、あらためて始めた学校もあります。福井県福井市立酒生(さこう)小学校です。

校長の松村聡先生に導入した経緯を聞くと、下校時の安全確保、子どもたちの学びの保証、教職員の働き方改革など、さまざまな課題にまとめてアプローチする方法として、午前5時間制に取り組んだのだとか。


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「午前5時間制という考え方自体は、教育学者の森信三先生が今から50年ほど前に出された著書の中で提唱されています。腰骨を立てて学ぶ立腰教育など、さまざまな提唱を他にもされている教育業界ではとても有名な先生です。

この小学校に初めて校長として来て、学校が抱える諸課題の解決を図る手段として、森信三先生が提唱する午前5時間制の導入に取り組みました。

例えば、学級閉鎖などが頻繁に起こるコロナ禍で豊かな教育活動を進める(質の高い授業を提供する)にはどうすればいいのか。

校区がとても広い酒生(さこう)小学校に通う子どもたちが、日没の早い冬でも明るいうちに歩いて帰れるように下校時間を早められないか。

教職員の場当たり的な働き方改革が行き詰まるなか、それらの課題を解決するために、午前5時間制を導入しました」(松村聡先生)
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午前5時間制の導入にあたって、ある意味で「常識」となった1コマ45分×午前4コマの時間割に校長の松村聡先生は手を加えます。

1コマ40分の授業を午前に5コマ、各授業の間に10分の休みを設け、3時間目と4時間目の間に15分間の大休みを入れた上で、12時25分に給食を始める時間割を組みました。

教職員やPTAに対する事前の説明が求められるものの、時間割の変更は校長の権限で可能なのだとか。

結果として、先生たちの授業内容そのものがスリム化し、リズムとテンポが改善され、子どもたちも今まで以上に集中して5時間目までの授業内容を学ぶようになったと、校長の松村先生は語ります。






4・5時間目まで1年生でも集中力高く授業に取り組んでいる
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