日本銀行の次期総裁候補である経済学者の植田和男氏が、2月下旬の国会での所信聴取と質疑で強い言葉で懸念を示したのが、日銀による上場投資信託(ETF)の買い入れでした。株価を下支えしてきた一方で、日銀が保有する株は時価総額で東証プライム市場の約7%を占めるようになり、日銀は実質的に「日本株最大の大株主」になっています。そのため、ETFを売却する際には多くの企業の株価が下落するおそれがあります。ETFの買い入れ策に警鐘を鳴らしてきたニッセイ基礎研究所の井出真吾氏に、この政策の問題点や日銀の新体制下での課題について聞きました。

 ――植田氏は国会で「大量に買ったものを今後どうしていくのかは大問題」とETFの大量保有に懸念を示しました。

 「黒田東彦(はるひこ)総裁は、ETF買い入れについて非を認めることをしてきませんでした。(国会で所信聴取などをみて)植田氏は是々非々で考える人だと感じました。明言はしませんが、『できることなら大量保有したETFを処分したい』といった思いが答弁から感じ取れました」

買い入れ額「投資判断ゆがめる恐れのある規模に」
 ――日銀がETFの買い入れを始めたのは2010年で、黒田氏の前の体制でした。黒田氏が13年に総裁に就任後、日銀がしてきたことは買い入れ額の増額でした。買い入れは増やすべきではなかったのでしょうか。

 「黒田氏が総裁になった13…(以下有料版で,残り2278文字)

朝日新聞 2023年3月10日 6時00分
https://www.asahi.com/articles/ASR3832CRR2XULFA008.html?iref=comtop_7_02