伊勢神宮内宮(三重県伊勢市)の門前に本店を構える老舗和菓子店「赤福」は毎年7月1日にだけ販売していた「竹流し」を、今年から「笹(ささ)わらび餅」に変える。45年前から1月を除く毎月1日に月替わりで限定販売している11種類の「朔日(ついたち)餅」の一つで、変更は初めて。人気商品で赤福には惜しむ声も多く届いているが、一体どうして――。

 伊勢神宮には毎月1日の早朝に参拝し、無事にひと月を過ごせたことを神様に感謝する「朔日参り」と呼ぶ風習がある。

 赤福は、この参拝客に向けて1978年から定番の赤福餅とは別に4月の「さくら餅」、5月の「かしわ餅」など季節感のある朔日餅を販売。なかでも青竹の容器に水ようかんを流し込み、笹の葉でフタをした7月の「竹流し」は、10月の「栗餅」に次ぐ人気商品だった。

中国産の生竹、確保できず
 だが、その製造ができなくなった。中国が2020年からロックダウン(都市封鎖)などのゼロコロナ政策を講じたためという。

 「竹流し」には青々とした本物の生竹の容器を使ってきた。当初は九州産の竹だったが、人気で製造数が年々増える一方、調達先の高齢化などで同じサイズの竹の確保が難しくなり、近年は中国産に切り替えていた。その入手ルートを中国のコロナ政策が直撃。昨年までは冷凍庫で保管していた竹でしのいだが、今年は在庫もなくなったという。

 赤福は今後も必要な生竹を確保するのは難しいと判断。新たな7月の朔日餅として「笹わらび餅」を開発した。こしあんが入ったわらび餅を七夕にちなんで笹の葉で包んだ商品だ。夏らしく冷やして食べる。

 「竹流し」のファンからは「朔日餅で一番好きだった」「復活してほしい」など残念がる声が多く届いているという。一方で「『笹わらび餅』を楽しみにしている」と新商品に期待する声も寄せられている。

 広報担当者は「さわやかな笹の香りと涼味が楽しめる『笹わらび餅』を、『竹流し』同様の人気商品に育てたい」と話している。

 本店では前日の6月30日午後5時から時間指定の整理券を配り、7月1日午前4時45分から販売する。ほかには事前予約で三重県四日市市や名古屋市、大阪市、京都市、神戸市の百貨店などでも販売する。ただ、予定数に達しており受け付けは終了している。(佐藤孝之)

朝日新聞 2023年6月27日 10時00分
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