アニメ業界に山積する課題を解決するため、アニメプロデューサーである植田益朗を代表理事として「一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟」(以下「NAFCA」)が、4月27日に設立された。同法人では今後、人材育成をはじめとした事業を行うことにより、日本のアニメの未来を築く一助となることを目指していくが、業界では今、インボイス制度の中止を求める動きなど多種多様な問題を抱えている。そこで今回、NAFCAの代表理事である植田氏と設立理事のヤマトナオミチ(演出)、甲斐田裕子(声優)に業界が抱える問題と解決策を聞いた。

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――アニメ業界が現在抱えている喫緊の課題を具体的に教えてください。

植田益朗:まずはアニメーターの人材不足、スキル不足の問題があります。製作委員会方式が取られるようになってから、一社が大きなリスクを抱えるということがなくなったためアニメが作りやすくなり、放送する本数が劇的に増えました。その結果、当然ですがアニメの絵を作る原画や動画というアニメーターの仕事が猛烈に増えて回らなくなり、特に動画を海外に発注することが増えたのです。

 かつて動画マンの仕事(※原画と原画の間に中割りを描き、動きを滑らかにしていく作業)はアニメーターの基礎訓練の場になっていたこともあったのですが、そこがすっぽりとなくなってしまったため、アニメーターとしての知識もスキルも足りていない新人が増えてしまいました。しかし目の前には大量の仕事があるため、とにかく手を動かさねばならず、結果、自分のスキルが今どうなのか、正しいことをやっているのかどうかさえわからない人材が大量に生まれることになりました。そしてそういったスキル不足のアニメーターの描いた絵をベテランの作画監督や総作画監督が修正したり、ときには描き直すことでなんとかクオリティを保っていますが、高齢化が進み、それも限界に来ていると感じています。

 大量に来た仕事を人海戦術でこなそうとしたところ破綻が起き、それをまた人海戦術的な手法でカバーしようとしていますが、それは悪循環でしかなく、一部の仕事ができる人たちの負担が異常に膨れ上がってしまっています。

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植田:それから、制作会社の低賃金の問題もあります。現在アニメの市場規模は3兆円や4兆円近いと言われたりしていますが、末端で一枚一枚絵を描いているアニメーターや、制作会社が儲かっているかといえばそうとも言えません。

 製作委員会方式では、出資比率に比例して利益の分配を行うことが基本ですから、大きな資金を出資できない、製作委員会に入れてもらえない制作会社にはなかなか大きな利益が戻ってこないという図式があります。とはいえ製作委員会方式が悪なのかというとそういう訳でもなく、先述の通り複数の企業でリスクを分散し、また宣伝広告もそれぞれの立場から多様に行うことができるため、それまではアニメ化が難しかったニッチな作品や挑戦的な作品もアニメ化しやすくなったというメリットがあります。

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――労働環境の悪さ、低賃金ということで人材が海外に流出していると報じられていますが、今の制作現場は主に何歳くらいの方が働いているのでしょうか?

ヤマト:アニメ業界にきちんとした統計がないため印象でのお話になりますが、現在働いているのは25〜30歳くらいの人が多いように感じます。そのあたりを境に業界を離れる人も多くいます。次のボリュームゾーンは90年代に活躍しアニメを「クールジャパン」に押し上げた、50〜60代かもしれません。現在はここの層が比較的厚いためなんとかなっている部分もありますが、近い将来彼らが年齢とともに現場を離れたとき、一体どれほどのスキルを持った人が残るのかと考えると、かなりぞっとします。

 収入も人によってかなりまちまちです。ここ数年、新人を社員化する制作会社も増えましたが、いわゆる所属フリーランスでのデビューでは、アニメーターを始めて数年はやはり枚数が描けないためかなり厳しい年収になります。それでも一昔前のような1ヶ月2万円、なんて言うことはなく、月に10万円程度、年間150万円程度は最低でもあるのではないでしょうか。そこからスキルとともにギャラは上がっていきます。スキルが認められて「この作品を専属でやってほしい」という「拘束」と呼ばれるオファーがあれば月額で25万円程度はもらえるのでかなり総額も増えますね。

 さらに、キャラクターデザインもするようになるとまたその金額感も上がりますが、それでも海外からのオファーに比べると数倍の差がありますので、それを聞いて海外に行った知人もいます。

■過酷な労働環境の原因 交渉が得意ではないクリエイターたち

以下ソース
https://news.yahoo.co.jp/articles/be876fcf2de6de2a0d2b27c4e4790c81e7bd1e50