山岳遭難時に位置情報を家族などに電子メールで伝えることができるスマートフォン用アプリを、ウェブ制作会社「キャプテン山形」(山形市)と鶴岡工業高専(山形県鶴岡市)が開発した。

 同社などは昨年、登山口に近付くとアプリが起動し、入・下山届を提出できるシステムを作った。新たにアプリの「SOS」ボタンを押すことでGPS(全地球測位システム)の位置情報を伝えられる機能を追加し、救助のさらなる効率化につなげる。鳥海山(2236メートル)で6月下旬から4か月間、実証実験を行い、来年夏に全国の山での本格運用を目指す。

 「○○さんからSOSが発信されました。至急、安否確認をお願いします」――。

 スマホの画面で一際目立つ赤い「SOS」ボタンを押すと、事前に緊急連絡先に指定したメールアドレスに一報が入る。メールには入山届を提出した人の名前と年齢、住所などのほか、その人がいる場所の経度・緯度が表示され、マップも見ることができる。

 また、30分〜1時間ごとに位置情報が同社に送られ、捜索の際に、遭難者が通ったルートを確認することもできる。

         ◇

 県警本部地域課によると、昨年1年間に、県内で登山中に遭難したのは37人。このうち3人が死亡した。

 主に遭難者や通報者から場所を聞き取って救助に向かうが、正確な場所が分からず発見に時間がかかることも多いという。実際、昨年7月17日に鳥海山の山頂付近で遭難した福島県の男性(当時65歳)は自ら110番したものの、濃霧で遭難場所が分からず、約1か月半後に遺体で発見された。

 キャプテン山形は昨年、鶴岡高専から技術面の協力を得て、登山口に設置した電波発信機に近づくと自動でスマホのアプリが起動し、入・下山届の提出と保険の申し込みができるシステムを作ったが、この遭難事故を受け、新たにボタン一つで正確な位置情報をメール送信できる機能の開発に乗り出したという。

 GPS機能で緊急通報する機器やアプリは他にもあるが、同社は「自動的に入・下山届の提出や保険への加入を促す機能と連動させることで、安全をさらに担保できる」とアピールする。

 県警山岳救助隊長の黒田一彦・地域課地域指導官は「遭難場所につながる情報やそれを得るための手段はあればあるほど良い。早く救助に向かうことができれば、それだけ助かる可能性が高まる」と話す。

         ◇

 同社は入・下山届の提出などを促すアプリを開発した昨夏、鳥海山で実証実験を行ったが、アプリを使うには事前の申し込みが必要だったため、4か月間での利用は52件にとどまった。

 今年はより多くの人に利用してもらうため、登山口で「アップストア」や「グーグルプレイ」を使って「入山管理」と検索すれば、無料でダウンロードできるように改良も加えたという。

 キャプテン山形の松川清専務は「万が一への備えとして使ってほしい。登山だけでなく、高齢者の見守りなどにも活用していきたい」としている。

2017年05月30日 07時44分 読売新聞
http://sp.yomiuri.co.jp/national/20170529-OYT1T50121.html?from=ytop_main8

http://yomiuri.co.jp/photo/20170529/20170529-OYT1I50050-1.jpg