「怪しい職」紹介され比へ 神戸の男性失踪1カ月
2017/6/29 15:30
https://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/201706/0010325526.shtml

 フィリピン西部の島からボートで島巡りに出掛けた井谷勝さん(59)ら日本人男性2人が行方不明となり、30日で1カ月を迎える。現地にいた別の日本人の男が殺人の疑いで地元警察に拘束されたが、容疑を否認しており、渡航の経緯などが謎のまま。井谷さんの知人男性が神戸新聞社の取材に応じ「東京の男性に現地での仕事を紹介されたので出国した」などと証言した。渡航前の井谷さんは神戸市内に住んでいたという。事件との関わりは不明だが「怪しい勧誘だと感じていた」とし、兵庫県警に情報提供するなどして全容解明を求めている。

 「フィリピンで月収25万〜30万円の仕事を見つけた」
 知人男性によると、井谷さんは今年に入り、そんな話をするようになった。
 井谷さんは昨年秋から警備会社に勤務し、神戸市長田区のシェアハウスで生活。フィリピン・セブ島に同国籍の妻と子どもがいるといい「現地で結婚したが安定した職に就けず、やむなく単身帰国した」と語っていた。永住も視野に同国での職探しをする中、昨年末に「東京の男性」とインターネット上で知り合ったという。
 ただ、仕事内容の説明は「高級野菜の販売」から「エビの養殖」「レストラン経営」へと変遷していった。知人男性は「だんだん話が大きくなっていて怪しい。裏があるからやめた方がいい」と忠告した。それでも井谷さんは今年5月初めごろ、東京の男性と面会し、視察メンバーに選ばれたと喜んだ。「スーツ姿できちんとした身なりの人だった」「多少の危険は覚悟している」などと忠告を意に介さなかったという。
 「職場環境を視察するため、東京の男性と一緒に島巡りをしてくる。滞在中には妻に1日会いに行けるよう許可をもらった」
 そんなことを話して渡航した井谷さん。入国後の5月30日朝、茨城県出身の新井康寛さん(24)とホテルからボートで島巡りに出掛けたまま、行方が分からなくなった。
 知人男性は「現地で奥さんと一緒に暮らせるようになるなら喜ばしいと思ったが、まさかこんな結末になるとは」と無念そうに語る。警察庁は事件を巡る日本国内での捜査については「コメントできない」としている。

 【フィリピン2邦人失踪事件】今年5月30日、フィリピン西部のブスアンガ島の島巡りに訪れた井谷勝さん(59)=大阪府出身=と新井康寛さん(24)=茨城県出身=が行方不明になった。地元警察が2人を殺害した容疑で現地にいた電設工事コンサル業長浜博之被告(55)=大阪府出身=を逮捕。地元検察が6月6日に起訴した。
 地元警察は、長浜被告が実行役のフィリピン人の男数人と共謀し、井谷さん、新井さんを殺害したとみている。2人は射殺された後、遺体を切断され、海に投げ込まれたなどと、ボート所有者が証言したという。
 2人には長浜被告の会社を受取人に、それぞれ2億円の海外旅行傷害保険が掛けられていたともされる。
 長浜被告は、島でレストランを開業するためネットで幹部候補生を募集して2人を招いたとし「マニラの空港で初めて会った。(2人が失踪当時は)商談で別の場所にいて、何も知らない」などと否認しているという。