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東京電力福島第1原発事故の業務上過失致死傷罪で強制起訴され、初公判のため東京地裁に入る(写真左から)武黒一郎元副社長、勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長=30日午前、東京・霞が関
 住み慣れた故郷を奪った未曽有の原発事故は「人災」だったのか。東京地裁で30日に開かれた東京電力福島第1原発事故の初公判。強制起訴された勝俣恒久元会長(77)ら東電の旧経営陣3人は無罪を主張し、全面的に争う姿勢を見せた。原発の安全神話が崩れ去り、世界が震撼(しんかん)した日から6年余り。今も6万人が避難生活を続ける中、責任の所在を明らかにする裁判が始まった。
 「事故は予見できなかった」。業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力の勝俣恒久元会長(77)ら旧経営陣3人は、謝罪の言葉を口にしながらも、裁判長を見据えながらきっぱりと無罪を主張した。

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初公判に出廷した(左から)東京電力の武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長、勝俣恒久元会長=30日午後、東京・霞が関の東京地裁(イラスト・山下正人氏)
 午前10時開廷。勝俣元会長ら3人は裁判長に促され、しっかりとした足取りで証言台に向かい、横一列に並んだ。「事故は予見できた」。検察官役の指定弁護士の起訴状読み上げに、勝俣元会長はじっと耳を傾け、水素爆発を起こす場面に差し掛かると視線を落とした。
 その後、罪状認否に先立ち「改めて深くおわび申し上げる」と述べ、事故を起こしたことを謝罪。深々と頭を下げた。武黒一郎(71)、武藤栄(67)両元副社長も謝罪の言葉を述べたが、3人とも「事故を予見することは不可能だった」などとはっきりとした口調で訴えた。

東京電力福島第1原発事故で強制起訴された旧経営陣3人の初公判で、傍聴券を求め並ぶ人たち=30日午前、東京・霞が関
 検察官役の神山啓史弁護士は、やや甲高い声で冒頭陳述を始め、「注意義務を尽くしていれば回避できたのではないか。それがこの裁判で問われている」と述べた。事故の概要や被害などを冷静に説明したが、「事故がなければ44人もの尊い命が奪われることはなかった」と感情をあらわにする場面もあった。
 裁判は午後も続き、弁護側の冒頭陳述などが行われた。「原発は十分な安全対策が取られていると認識していた」。弁護人が主張する間、勝俣元会長は口を真一文字に結び、手元の書面を見詰めながら聞き入った。
 法廷には、福島県からも多くの傍聴人が訪れた。勝俣元会長の弁護人が「事故は想定外だった」と訴えると、傍聴席から失笑が漏れた。(2017/06/30-17:57)