今回開発した1kW級SOFCスタックの外観
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/070408206/jst_01.jpg

京都大学、ノリタケカンパニーリミテド、IHI、日本触媒、豊田自動織機、三井化学、トクヤマらの共同研究チームは2017年7月3日、
アンモニア(NH3)を直接燃料とした固体酸化物形燃料電池(SOFC)で1kWクラスの発電に成功したと発表した(JSTのニュースリリース)。

アンモニアがSOFCの燃料に適しており、有害物質や温暖化ガスの発生を伴わない発電が実用規模まで拡大できる可能性を示す結果という。

直接アンモニアSOFCは、電解質であるジルコニアの片面に取り付けた燃料極にアンモニアガスを直接供給し、反対側の空気極に空気を供給することで、両極の間で電力を発生させる仕組み。
アンモニアは、水素を多く含むことから、エネルギーキャリアの候補として注目されている。

今回、この燃料電池単セルを30枚積層し、温度分布を最小にしてアンモニアが各セルに均等に流れるようにした。
同スタックに直接アンモニア燃料を供給して発電した結果、純水素と同等レベルの良好な発電特性が得られた。発電効率はSOFCの特徴である50%超を達成。さらに、1000時間の安定した連続運転に成功した。

直接アンモニアSOFCの原理
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/070408206/jst_02.gif?__scale=w:500,h:355&;_sh=08906a0620

燃料供給方式としてアンモニアと空気の混合ガスをハニカム構造の触媒に供給して部分燃焼する触媒、およびオートサーマル反応器(自己熱反応器)を開発。同反応器による水素混合ガスをSOFCスタックに供給して、1kW級発電に成功した。
オートサーマル反応器は、出口ガス温度500℃までの所要時間が130秒の高速起動が可能。アンモニアを燃料とするSOFCの、外部加熱によらない高速起動の可能性を示す技術として期待されている。

1kW級SOFC用オートサーマル反応器の構造
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/070408206/jst_03.gif?__scale=w:500,h:218&;_sh=06a0e50c40

今回の研究は、総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「エネルギーキャリア」の一環で、科学技術振興機構(JST)の委託研究として実施した。
詳細は「The 7th World Hydrogen Technology Convention」(チェコ共和国プラハ、2017年7月9〜12日)で発表する。

配信 2017/07/04 13:24
日経テクノロジー
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/070408206/