[東京 5日 ロイター] - 日銀は19、20日に開く金融政策決定会合で、2017年度を中心に消費者物価見通しの下方修正を検討する可能性が大きいが、
需給ギャップの改善など物価上昇のモメンタム(勢い)は維持されているとの見方が多く、現行の金融政策を維持する見通しだ。複数の関係筋が語った。

日銀が3日に発表した6月短観では、大企業製造業の業況判断DIが3四半期連続で改善するなど、非製造業を含めて幅広い業種で景況感の改善継続が確認された。
海外経済の持ち直しを背景に、輸出や生産が主導するかたちで回復を続けてきた日本経済は、ここにきて個人消費にも明るさが見え始めた。

日銀は、内外需のバランスが取れ、しっかりした好循環に入りつつあるとの見方を強めており、景気の先行きに自信を深めている。
それにもかかわらず、物価上昇には依然として加速感が見られない。5月の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は前年比0.4%上昇と5カ月連続のプラスとなったものの、日銀の当初の想定よりも動きは緩慢だ。

次回会合では、先行きの経済・物価見通しや金融政策運営の考え方を示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を議論するが、その中で好調な経済と鈍い物価動向の要因を分析し、そのメカニズムを整理する考え。
足元の物価動向を踏まえれば、物価見通し(政策委員見通しの中央値)は4月の同リポートで示した17年度平均のプラス1.4%は厳しい情勢で、下方修正が議論となる可能性が大きい。

どの程度の下振れになるかは、鈍い物価上昇の要因に関する分析結果によって変動するとみられる。

日銀内では、1)携帯電話の値下げ、2)人手不足が賃上げよりも省力化投資などに向かい、短期的に物価上昇を抑制している、3)円安傾向にもかかわらず輸入財である家電製品の価格が上がりにくい、4)高齢化の進行を背景に消費が力強さを欠いているーーなどさまざまな見方が聞かれている。

仮に17年度が大幅な下振れになれば、18年度見通しの1.7%の下方修正も避けられない。現在、「2018年度ごろ」と見込んでいる物価2%の到達時期にも影響する可能性があり、入念に点検する考え。
もっとも、金融政策運営については、重視する需給ギャップを中心とした「2%の物価安定目標に向けたモメンタム」は維持されている、というのが政策委員のほぼ一致した見解。

日銀が5日に公表した1─3月期の需給ギャップはプラス0.79%と3四半期連続の需要超過となった。これはリーマン・ショック前の2006年1─3月期から2008年4─6月期までの10四半期連続以来の長さとなる。
このまま需給ギャップの改善が続けば、いずれ物価上昇率も加速する時期が到来し、期待インフレ率も上向き傾向が鮮明になるとの見立てだ。

6月15、16日に開催された金融政策決定会合の主な意見でも、現行の緩和的な金融政策の下で、需給ギャップと雇用情勢の改善を促すことが物価目標達成に「最も有効」との考えが示された。
物価上昇のモメンタムが維持されている中で、追加緩和は必要ないとの見解が日銀内で大勢を占めており、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する現行政策を維持する見通しだ。

配信 2017年 07月 5日 15:40 JST
ロイター
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